2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K18609
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
土畑 重人 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50714995)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 社会進化 / 実験進化 / 貯穀害虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
室内での進化実験を行うことにより,非社会性昆虫に利他的ないし協力的な個体間相互作用を進化させることを目的に,貯穀害虫であるアズキゾウムシの幼虫期における資源競争形質に着目した研究を行った.血縁選択理論に基づき,個体間血縁度を高めることによって協力形質が進化することが期待されたため,ひとつのアズキ粒を共有する幼虫間の血縁度を高くした状態(単一メス由来の全きょうだいで共有)で進化させた系統と,低くした状態(複数メス由来の半きょうだいで共有)で進化させた系統(各3系統,京都大学・京極大助氏により確立,共同して維持)とで,孵化卵あたりの成虫羽脱率,一豆あたりの羽脱個体数と体サイズとの関係を比較した.また,国内各地の栽培アズキから得られたアズキゾウムシから新規に3系統を確立し,実験室内で9年~80年経過した既存の9系統とを併せて,メスの産卵パタン(幼虫は豆間を移動できないため,豆内の資源競争は母虫の産卵に規定される)を比較した.並行して,複数メスによる豆上への産卵パタン(集中・ポアソン・一様分布)と豆内の幼虫間の血縁度との関係を理論的に検討した.産卵パタンの変化は産卵規制物質によって生じることが知られているが,解析の結果,幼虫間の血縁度が負(すなわち,豆内で相互作用する2個体が集団全体からランダムに取り出した2個体よりも同祖遺伝子を持つ確率が低い)になる条件が存在することが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
進化実験に関しては,血縁選択と交絡する性選択や密度依存選択の効果を排除することが必要であるため,資源競争実験について実験デザインを再検討する必要がある.理論的側面での理解の進展はあったが,遺伝マーカーを用いた研究が予定よりやや遅れているため,解析を行うことが急務である.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,血縁選択による協力形質の進化が期待される条件での実験進化を行う.初年度は幼虫の資源競争形質に着目したが,平成28年度は交尾行動における雌雄間対立に着目し,オス間競争がメスに対してもたらすコスト(sexual harassment)が,競合するオス間の血縁度に応じて進化的に変化する可能性を検討する.初年度にあまり進捗しなかった遺伝マーカーを用いた研究を本年度は重点的に行う予定である.具体的には,既存のマイクロサテライトマーカーを用いて,複数オスと交尾したメスから得られたF1世代の父系割合(P2値)を調査することや,系統間の遺伝的関係をマイクロサテライトマーカーで評価し,掛け合わせによる染色体地図作成に相応しい系統組合せを探索することを計画している.また,野外より採集した個体からの新規系統作成を引き続き行う.
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Causes of Carryover |
基金分の2年の研究計画の1年目が終了した時点での残額があるため.予算執行はおおむね計画した通りであり,研究自体の進捗には問題はない.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の研究計画の通りに使用する.前年度からの進化実験,飼育とともに,平成28年度は主に遺伝学的研究にウェイトを移す予定である.
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