2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K18611
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
山尾 僚 弘前大学, 農学生命科学部, 助教 (50727691)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 種間競争 / 遺伝構造 / 可塑性 / 植物 / 識別 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の種間競争における研究では、ある種とある種がそれぞれ1個体で生育している条件が想定され、進められてきた。しかし、実際には植物集団中には遺伝構造が存在し、多くの場合植物は血縁個体と共に種間競争に曝される。本年度は、オオバコと他種競争者であるシロツメクサを用いて、オオバコの近隣個体の遺伝子型がシロツメクサとの種間競争に及ぼす影響を明らかにするため、栽培実験を実施した。その結果、シロツメクサの成長は、オオバコを非血縁個体同士で生育させた条件よりも、血縁個体同士で生育させた条件において小さく、その違いはオオバコの地上部の形状によって説明できることが示唆された。さらに、オオバコの成長量と種子生産量は血縁個体同士で生育させた条件において、非血縁個体同士で生育させた条件よりも多かった。また、競争者種とオオバコ属植物間の地上部や地下部、または、オオバコ間の地上部や地下部の相互作用を遮断した条件での栽培により、血縁条件と非血縁条件下での可塑性の違いが、種間競争に強く関与していることが示唆された。以上の結果は、遺伝的に近い個体と集団で生育することは、種間競争に対して有利であることを示唆しており、種間競争の結果が種内の遺伝構造に依存していることを意味している。今後は、本現象の一般性と種間競争のメカニズムの解明を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、種内の遺伝構造が種間競争に及ぼす影響について明らかにした。また、競争者種とオオバコ属植物間の地上部や地下部、または、オオバコ間の地上部や地下部の相互作用を遮断した条件での栽培実験により、血縁条件と非血縁条件下での可塑性の違いが、種間競争に強く関与していることが示唆された。また、予定通りに異なる集団のオオバコの交配と1年草種を用いた実験準備も進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本現象の一般性と種間競争のメカニズムの解明を目指す。メカニズムとして、地上部の形状に加え、アレロパシー物質として既に知られている、イリドイド・グリコシドと総フェノールを、オオバコ属植物の地上部と地下部でそれぞれ定量化する。 また、血縁度の異なる種子を6系統作成する。また、掛け合わせる際に、種子親由来と花粉親由来の種子の両系統と作成する。加えて、 野外に生育するオオバコ集団においても血縁者間の協力が生じていることを確かめる。 1年草を用いた同様の実験も実施し、生涯適応度についても明らかにする。
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