2016 Fiscal Year Research-status Report
環境変化を考慮したハクセンシオマネキにおける複数様式シグナルの適応的意義の解明
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15K18613
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
竹下 文雄 熊本大学, 沿岸域環境科学教育研究センター, 特任助教 (00723842)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 甲殻類 / ハクセンシオマネキ / waving / 求愛音 / 複数様式 / 妨害 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)昨年度に行ったハクセンシオマネキのオスにおける栄養条件操作下での複数の求愛ディスプレイ比較実験から得られた、waving頻度と発音頻度の映像・音声解析および(2)配偶ペアと近隣の妨害オスに着目した配偶プロセスの野外調査を行った。 (1)複数様式のシグナルの状態依存性を検討するため、昨年度に、餌条件を3段階 (餌添加・コントロール・餌除去) に操作した群間で、雄のセミドームの形成頻度、broadcasting頻度、waving頻度、発音頻度、血中ラクテート濃度を比較した。昨年度までに解析が完了しなかったwaving頻度と発音頻度の解析を行ったところ、これらに関しては操作群間での違いは見られなかった。昨年度の結果と合わせると、broadcasting頻度は雄の栄養状態を反映するものの、他の形質は栄養状態を反映しないことが示唆された。また餌添加区で見られた血中ラクテート濃度の増加には、broadcasting頻度の増加が寄与することが示唆された。 (2)近隣のオスが求愛オスのシグナル伝達およびメスのシグナル評価を妨害するか検討するために、野外で配偶者を探索するメスを追跡し、配偶が成立するまで観察を行なった。その結果、およそ85%の割合で、近隣オスによる妨害が観察された。妨害行動は、探索メスが求愛オスの巣穴を訪問し内部に移動した際に、近隣オスがその巣穴方向に移動することと定義した。このうち妨害行動として、妨害個体が大ハサミ脚を地面に擦り付けながら巣穴に接近する行動(約50%)、巣穴近くでハサミを地面に叩きつける行動(約10%)、ハサミの巣穴内部への挿入(約4%)が観察された。また妨害が生じた場合の交尾成功率は、妨害が生じなかった場合の交尾成功率に比べ有意に低かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目までに予定していた計画のほぼ全てを実行しており、比較的良好な成果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
想定していた環境要因のうち「近隣オスの妨害」に関しては十分な野外データが取れた。今後は野外実験により、近隣オスの妨害行動が配偶者選択に影響を及ぼす至近的理由を検討するとともに、他の想定している環境要因である「物理環境」と「人為的環境」の中から、より本種の配偶者選択に影響する可能性の高い要因に焦点を絞り、調査・実験を行う。また複数様式シグナルを構成するひとつとして視覚シグナルに関する研究も進める。このように調査項目が多くなるため、それぞれの項目で十分なサンプルサイズが得られない可能性が予想されるため、必要であれば大学院生などを雇用するなどして対応する。
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