2016 Fiscal Year Research-status Report
魚類の受精をめぐる競争と隠れた雌の選択:雄と雌の間で何が起きているのか?
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15K18614
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
太田 和孝 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特任助教 (50527900)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 代替繁殖戦術 / スニーキング / 意思決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,産卵行動の観察が容易なヘビギンポ科魚類を用いて, 1.受精動態と隠れた雌の選択を考慮した’配偶後の性淘汰’の実態を解明すること 2.精子形質の適応進化の解明を通じて配偶後の性淘汰に関連した適応進化を実証すること を目的とし,これらの成果によって体外受精生物における配偶後性淘汰の理解を前進させることにある.本年度は,宇和海の浅海域でヘビギンポのスニーカー雄の産卵に関連した行動の詳細な野外調査,様々な条件(雌のキューの有無,ライバル雄のキューの有無)における精子形質の測定,野外での卵の採集を実施した.野外調査は高速度ビデオカメラを用いて行われた.ビデオ解析はほとんど終了し,雌とは独立のスニーカーの動きが明らかになった.また,捕食者の存在と他種の存在がスニーカーの成功に強く影響することも示唆された.これらは,本テーマとは離れてしまうが,産卵行動の理解には欠かせないものとして,来年度以降の研究に反映させていく必要があるだろう.前年度以上に,スニーキング行動の理解が進んだ.現在,その成果の公表に向けて論文を執筆中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた調査はおおむね実施できた.但し,雌の産卵行動の観察が思うように進んではいない.やはり卵が見えないということが大きなネックになっている.水槽実験で実施する方がよいと判断し,飼育環境下での観察も開始したが産卵に至ってはおらず,この点は改良の余地がある.しかし,スニーキング行動の解析によって,これまで考えられてきた以上にスニーカーには細かな意思決定が存在することが明らかになりつつあり,この点は計画以上の成果といえる.総合的に見て順調であると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,計画通り進める.具体的には前年度に採取したビデオデータの解析を続け,調査としては雌の行動の解析と父子判定を実施する.但し,申請時には思いつかなかった結果も出てきており,野外調査においては,その点も考慮して観察する.
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Causes of Carryover |
本研究はカメラなどの民生電化製品に頼るところが大きい.これらは毎年のように機能的を充実させた製品が発売される.本研究では,新たに追加された機能を利用することで,より詳細なデータが得られることが容易に想像できたため,当初の計画よりも高額な商品を購入することにした.結果として,当初の予算より物品にかかる経費が増加した.差額はそれによって発生したものである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今執筆中の原稿の英文校閲や学会旅費などに使いたい.
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