2017 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidating the evolutionary process of archaic-like haplotype related to high-altitude adaptation in modern humans
Project/Area Number |
15K18621
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
安河内 彦輝 三重大学, 地域イノベーション推進機構, 助教 (60624525)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 高地適応 / EPAS1 / EGLN1 / 旧人類 / 関連解析 / 低圧低酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、現生人類集団に伝播した高地適応に関わる旧人類由来ハプロタイプの進化過程を明らかにすることであった。しかし、解析した集団には目的のハプロタイプは伝播していないことが示唆された(初年度の実施報告書参照)。 そこで、チベット集団の高地適応に関わるEGLN1遺伝子のSNPを調査する方針に切り替えた。具体的には、低圧低酸素曝露実験を受けた日本人男性47名の生理データとEGLN1遺伝子多型との関連を調査した。この実験は九州大学の研究グループにより環境適応研究実験施設で実施され、気圧を0から2500、4000 m相当まで段階的に下げ、その間における生理データを取得した。我々の関連解析の結果、2つのSNPにおいて高地集団で適応的とみられる対立遺伝子をもつ個体は動脈血酸素飽和度(SpO2)の値が低く、急性の気圧・酸素濃度の変化に対してSpO2の応答が早いことを示した。このことは、高地で適応的な対立遺伝子が日本人ではむしろ急性高山病のリスク要因であることを示唆する。この結果は学術雑誌に論文として掲載された。 さらに、南米ボリビア高地集団の現地大学生103名の生理データを現地で測定した。全ての被験者から唾液を採取してDNAを抽出し、10検体分のDNA試料を用いて全ゲノム塩基配列を決定した。その結果、高地適応への寄与が示唆されているペルー集団特異的なSNPにおいて、ボリビア集団でも多型が存在し、両集団の遺伝的特性が類似していることが示唆された。 現生人類のHLA領域に旧人類由来の対立遺伝子(HLA-B*73)が伝播したという報告がScienceにあり、当初の目的と関連することから、その領域の進化学的解析をおこなった。その結果、実際には旧人類との交雑でHLA-B*73が現生人類に伝播した可能性は低いことがわかった。この結果は学術雑誌に論文として掲載された。
|