2016 Fiscal Year Research-status Report
高地集団の循環動態における生理的多型―チベット族・アンデス族と日本人の比較―
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15K18623
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
西村 貴孝 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (80713148)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 高地適応 / 生理的多型 |
Outline of Annual Research Achievements |
高地に進出した人類は、生体内の酸素レベルを維持するため独自に循環機能を適応させた。その中で、アンデス族は換気亢進やヘモグロビン濃度の増加によって適応したとされる。しかし、そのような高地適応をした集団においても、生理的特性に個人差があるのか、またあるとすればその要因はなんなのか等の議論は十分ではなかった。それらを明らかにするため、ボリビア共和国のラパス(標高約4000m)において調査を実施した。
2016年11月から12月にかけて、ボリビア共和国で調査を実施した。予定通り若年成人男女約100名の生理データを取得した。測定項目は形態測定に加えて、血中酸素飽和度を、ヘモグロビン濃度、血圧、心拍数等であった。現地スタッフの協力により、スペイン語による研究説明、同意取得等を行い、特に問題なく調査を終えた。データを解析したところ、ボリビアの男女ともにBMIが高く、日本人と比べてやや肥満傾向にあった。また酸素飽和度は先行研究よりもやや低値であった。一方で、血圧や心拍数などは低地集団と同等であった。ヘモグロビン濃度は男女差があり、ボリビア人女性はボリビア人男性に比べて低値であった。低地集団においてもヘモグロビンは女性で低いため、その男女差は長期的に高地で生活していても喪失されないと考えられた。
本研究の大きな目的である、高地集団の生理的多型については今後検討しなければならないが、ヘモグロビン濃度だけでもかなりのバラツキがあり、長期的に高地で生活しているボリビア人においても適応に個人差があると考えられた。遺伝的解析を含む、それらの決定要因を今後明らかにしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、ボリビアでの調査を終えてデータを解析中である。データの欠損もほぼなかったため、統計的にも十分なサンプル数を保持して解析に取り組んでいる。ただし、当初予定より遺伝的解析がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
生理データについて、予想よりも大きなバラツキが見られたため、その要因を探っていく必要がある。生活習慣や運動習慣等はある程度均一であったため、遺伝的背景が関与している可能性が考えられる。そのため高地適応と関連が指摘されているEPAS1やEGLIN1の遺伝的解析を実施し、高地適応と生理的多型の関連をより詳細に検討する。
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Causes of Carryover |
遺伝的解析が遅れていることと、チベット地域への調査が延期されたことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
遺伝子解析関連の試薬、およびチベット地域調査の旅費等に使用する。
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Research Products
(5 results)