2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K18648
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
入枝 泰樹 立教大学, 理学部, ポストドクトラルフェロー (00749244)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 糸状菌-植物間相互作用 / 色素体応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.はじめに、シロイヌナズナの表皮細胞表層側における色素体出現が、接種する炭疽病菌により差異が認められる現象かどうか検討を行った。その結果、色素体の出現率は、シロイヌナズナに感染できないクワ炭疽病菌(不適応型菌)に対しては高いが、シロイヌナズナを宿主とするアブラナ科炭疽病菌(適応型菌)の接種時には劇的に低下することがわかった。このことは、本現象が非宿主抵抗性に関与する可能性を示唆しており、適応型菌は本現象を抑制する機能を有すると推定される。 2.色素体の分化・分裂・細胞内移動等、その動態に関連した遺伝子のシロイヌナズナにおけるT-DNA挿入変異株をArabidopsis Biological Resource Center (ABRC)より入手した。着目した遺伝子は次の通りである。色素体分裂に関連する遺伝子(FtsZ1、FtsZ2、ARC3、PARC6、PDV2、MCD1)、色素体分化に関連する遺伝子(GLK2、CGA1)、色素体の細胞内移動に関連する遺伝子(CHUP1、PMI1、PMI2、PMI15、WEB1、KAC2、Thrumin1)。 このうち、色素体分裂関連遺伝子の変異株について、T-DNAの挿入をPCR法により確認後、葉肉細胞における葉緑体数の減少とサイズの肥大を観察し、当該遺伝子の変異を確認した。これらの株に適応型のアブラナ科炭疽病菌を接種し、表皮細胞表層側における色素体出現および病害抵抗性への影響を解析した。その結果、色素体出現率に若干の低下が認められた。また、本菌の壊死斑形成は、ftsZ1株およびftsZ2株でわずかに低下している可能性が考えられたが、他の変異株では影響は認められなかった。このことから、適応型菌への病害抵抗性には色素体分裂関連遺伝子はほとんど影響しないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
色素体の分化・分裂・細胞内移動等、動態関連遺伝子のシロイヌナズナ変異株を入手する作業と当該遺伝子の変異確認作業に多少の時間を要した。現在、色素体分裂関連遺伝子の変異株についてのみ、病原性試験および色素体応答解析を行っている段階であるが、その他変異株に関しても順次解析を進めている。また、不適応型炭疽病菌と適応型炭疽病菌のそれぞれに対する色素体応答が異なることを発見したことにより、本現象が炭疽病菌抵抗性へ関与する可能性が高まったことを考慮すると、進捗状況はおおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
入手したシロイヌナズナ変異株に関して、引き続き、病原性試験と色素体応答解析を実施する。また、新たに不適応型のウリ類炭疽病菌を用いてシロイヌナズナの色素体応答を解析し、不適応型菌に特異的な現象かどうかを評価する。そして、当初の計画通り、色素体応答を誘導する炭疽病菌のシグナルについても解析を実施し、下流の色素体応答に繋がる炭疽病菌の認識機構を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初の計画通り、平成28年度日本植物病理学会大会へ参加したが、出張期間が平成28年3月20日から3月23日と年度末であったため、平成28年度分の支出として会計処理を行う手続きを行った分が含まれる。また、シロイヌナズナ種子の購入代金も年度末であったため平成28年度支出として手続きを行った。その他、平成27年度に研究図書の購入がなかったこととも理由の一つに挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
未使用額は、平成28年度日本植物病理学会大会への出張経費およびシロイヌナズナ種子購入代金として使用する。また、次年度における研究図書の購入、学会への参加費として使用する計画である。 次年度請求額は、実験を遂行する上で必要な、一般試薬、合成DNA、ガラス容器、プラスチック容器、植物の種子等の購入費用として当初の計画通り使用する。加えて、実験に必要な恒温培養装置の購入費用に使用する。また、平成28年度糸状菌分子生物学コンファレンス等、学会への出張旅費として使用する計画である。
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