2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K18650
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Research Institution | Iwate Biotechnology Research Center |
Principal Investigator |
小林 光智衣 公益財団法人岩手生物工学研究センター, ゲノム育種研究部, 研究員 (10751539)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 植物病原菌の全ゲノム解読 / 花成抑制因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
アワしらが病は、卵菌類の一種(Sclerospora graminicola (Sacc.) Schroet.)によって引き起こされるアワの重要病害である。しらが病菌に感染したアワは生育不良となり、穂では特徴的な葉化病徵が誘発される。この表現型の変化には病原菌が生産するエフェクター等の関与が考えられるが、詳細はほとんど研究されていない。本研究では、しらが病菌の全ゲノム解読およびトランスクリプトーム解析を行い、しらが病菌が分泌するエフェクターを同定・解析することにより、葉化病徵の発病機構の解明を最終目標とする。 初年度は、しらが病菌の研究基盤の整備を目的として、しらが病菌の全ゲノム解読および感染植物のRNAseq解析を行った。アセンブルされたゲノム配列は、真核生物に広く保存された遺伝子セットを95%以上カバーしており、エフェクター単離に用いるのに十分なドラフトゲノムが完成したと考えられた。しらが病菌の推定ゲノムサイズは約360 Mbであり、全ゲノム配列が公開されている卵菌類では最大級であったが、約73%はリピート配列と予測された。RNAseq解析と遺伝子予測ソフトによる解析から16,736遺伝子が予測された。エフェクター候補となりうる推定の分泌タンパク質をコードする遺伝子は1,220個あり、そのうち305個が感染にともない発現誘導された。これらをエフェクター候補として今後の解析に用いる。 また植物側のRNAseq解析を行った結果、花成の抑制因子と考えられているSVP MADS-boxの一つであるMADS47のホモログ遺伝子の発現量が罹病穂で顕著に増加することが明らかとなった。一方、花成の正の制御因子については、A-classのMADS-box遺伝子以外はほとんどが減少していた。以上から、しらが病菌のエフェクターは、A-class MADS-box遺伝子の誘導からSVP MADS-box遺伝子抑制の間のいずれかのシグナルを撹乱している可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究基盤となるしらが病菌の全ゲノム解読と感染植物におけるRNAseq解析を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
しらが病菌の全ゲノム解析とRNAseq解析から予測されたエフェクター候補をクローニングし、形態変化をもたらす因子をスクリーニングする。スクリーニングの評価方法は以下の通りである。1)イネで過剰発現体を作出し、穂および植物体全体の形態変化、出穂の遅延、病原菌に対する応答を解析する。2)SiMADS47プロモーターをクローニングし、レポーター遺伝子としてルシフェラーゼを連結したキメラ遺伝子を作製し、イネに導入して形質転換体を作出する。それを材料にプロトプラストを作製し、クローニングされたしらが病菌エフェクター候補を一過的に発現させることにより、SiMADS47プロモーター活性を解析し、その発現変化でスクリーニングを行う。3)しらが病菌と同じ卵菌類であり、形質転換が可能なPhytophthora parmivolaにエフェクター候補遺伝子を発現させ、穂孕み期のアワに感染させることにより穂の形態変化をもたらすかを評価する。
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Causes of Carryover |
ゲノムシーケンス費用のうち、委託発注分の納品が年度内に完了しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
発注したシーケンス作業は順調に進められており、今年度の前半には納品される予定である。
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Research Products
(2 results)