2015 Fiscal Year Research-status Report
乾燥および高温ストレスによる転写因子の安定化機構の種横断的解析
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15K18652
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
溝井 順哉 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 講師 (20469753)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 植物 / 高温ストレス / 転写因子 / 翻訳後制御 / リン酸化 / 安定化 |
Outline of Annual Research Achievements |
高温や乾燥で安定化し下流遺伝子の転写を活性化するシロイヌナズナの転写因子DREB2Aについて、通常時の不安定化、およびストレスに応答した安定化に関するドメイン解析を行った。これまでにDREB2Aの安定性は負の活性調節ドメイン(Negative Regulatory Domain, NRD)によって制御されていることが示されていた。NRDはSer/Thrや酸性アミノ酸に富む30残基ほどのドメインである。Ser/Thrはリン酸化修飾を受ける残基であるため、NRD内の被子植物で保存されたSer/ThrをAlaまたはAspに置換した変異型DREB2Aを作出した。プロトプラストの一過的発現系および形質転換植物内で、Ala置換した変異型は安定性が向上したが、Asp置換した変異型は不安定であり、NRDのリン酸化が安定性を負に制御する可能性が示された。Phos-tagを用いたイムノブロット解析の結果、通常時にタンパク質分解を阻害したときに蓄積するDREB2Aはほとんどがリン酸化型であること、NRDを除いたDREB2AやAla置換型DREB2Aのような安定性が向上した変異型DREB2Aでは、リン酸化レベルが下がり脱リン酸化型が蓄積することが明らかになった。さらに、高温ストレスに応答して蓄積するDREB2Aは主に非リン酸化型であることが示されたが、一方でNRDを除いたDREB2Aも高温に応答して安定することが示された。以上の結果から、NRDのリン酸化はDREB2Aの安定性を低下させるが、一方でDREB2Aの高温ストレスに関連した安定性制御には、NRDのリン酸化に依存する経路と依存しない経路が存在することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
通常時や高温ストレス時における安定性制御において、NRDのリン酸化が関与していることが示された。一方、高温に応答した安定化にはNRD以外のドメインを通じた制御も関係していることが示された。高温時にDREB2Aのリン酸化レベルが下がることが見出されたことから、ストレス応答の上流解明への手がかりが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
DREB2Aがリン酸化されること、高温ストレス下ではリン酸化レベルが低下することは当初は想定していなかった。高温ストレス応答の上流につながる手がかりが得られたことから、今後は、安定化に関するドメイン解析にリン酸化状態の解析も加えるとともに、高温ストレスでDREB2Aのリン酸化レベルが低下する現象に着目して上流の解明を目指すよう計画を変更する。イネやダイズに関しても同様の視点をもとに解析を進めるようにする。
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Causes of Carryover |
予算内で研究を行うよう留意した結果、少額の残額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
少額の試薬や消耗品の購入に用いる。
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