2017 Fiscal Year Research-status Report
ムギネ酸類・ニコチアナミン分泌を介した鉄移行と鉄恒常性維持の分子メカニズムの解明
Project/Area Number |
15K18658
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
野副 朋子 明治学院大学, 教養教育センター, 講師 (90590208)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 鉄 / ムギネ酸 / ニコチアナミン / イネ / エリアンサス |
Outline of Annual Research Achievements |
ムギネ酸類は、土壌中から鉄を獲得するためにイネ科植物の根から分泌される三価鉄キレーターである。ムギネ酸類はその前駆物質であるニコチアナミン(NA)とともに、植物体内の鉄移行を担い、鉄欠乏シグナル物質としても機能すると考えられ注目されている。本申請研究はムギネ酸類及びNA分泌の分子機構を解明し、植物におけるムギネ酸類やNAを介した鉄移行、鉄恒常性維持機構を分子レベルで理解することを目指している。 平成29年度はバイオエタノールの供給源として着目されているバイオマス植物である、エリアンサスの鉄獲得機構について調べた。エリアンサスはムギネ酸類として、デオキシムギネ酸に加えてムギネ酸を合成して根から根圏へと分泌することを見出した。さらに、根の三価鉄還元酵素活性を有し、鉄欠乏条件下では三価鉄還元酵素活性が上昇することを示した。これらのことから、エリアンサスはイネ科植物に属し、ムギネ酸類を用いて鉄の獲得を行っているが、双子葉植物と同様に根の三価鉄還元酵素により三価鉄を二価鉄に還元し、二価鉄トランスポーターにより鉄を吸収する機構も備えていることが示唆された。また、エリアンサスとイネの混植実験を行い、イネとの混植で鉄欠乏条件下でのエリアンサスの鉄栄養が改善すること、ムギネ酸分泌能を付与した形質転換イネとの混植では、非形質転換イネとの混植に比べて大幅に鉄栄養が改善することを示した。エリアンサスにおいてもムギネ酸類合成及び分泌を高めることで、鉄の獲得及び地上部への移行が増加し、鉄欠乏耐性能を付与できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請者は2015年4月より東京大学大学院農学生命科学研究科から明治学院大学教養教育センターに所属を変更した。明治学院大学は文系の大学であり、設備が十分であるとはいえないため、東京大学大学院農学生命科学研究科において研究を継続している。また申請者は2015年9月11日に長女を出産し、産後休暇10週間を取得して職場に復帰した。2017年度は明治学院大学に着任して3年目に入ったこと、国際共同研究加速基金に伴い、講義の任務を免除していただいたため、研究に専念することができたが、当初の計画からはやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者は当申請課題をさらに発展させるための国際共同研究加速基金に採択され、2017年度に明治学院大学において在外研究を取得した。国際共同研究加速基金においては、ドイツの2か所の研究室に滞在して、ムギネ酸類が鉄とキレートした状態としていない状態とを区別して測定する方法、および、可視化できるムギネ酸類を合成する方法を習得した。さらにドイツの2か所の研究所と協力関係を結ぶことができた。2018年度は本申請研究の最終年度に当たる。ドイツで習得した方法を日本でも行えるように確立するとともに、ドイツで行った研究の結果とこれまで本研究課題において日本で得られた知見をまとめて発表したいと考えている。
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Causes of Carryover |
申請者は2015年度4月より東京大学大学院農学生命科学研究科から明治学院大学教養教育センターに所属を変更し、さらに2015年9月11日に長女を出産したため、研究計画書を作成した当初とは状況が変化した。さらに2017年度は国際共同研究加速基金に採択され在外研究を行ったため、研究計画の変更が生じている。私生活の変化から3年目に入り、研究の状況は整いつつあるが、全体としての研究計画には変更が生じているため、次年度へと研究費を繰り越す必要が生じた。
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