2016 Fiscal Year Research-status Report
酸性土壌耐性の必須転写因子STOP1が制御する遺伝子群の種を超えた統合
Project/Area Number |
15K18661
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Research Institution | College of Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
小松 憲治 東京農業大学短期大学部, その他部局等, 助教 (90594268)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アルミニウム耐性 / 酸性土壌耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
STOP1転写因子は、低pH・アルミニウム耐性遺伝子の発現を包括的に誘導し、強力な耐性を付与する陸上植物共通のマスタースイッチとして知られる。申請者が行った実験の結果から、ヒメツリガネゴケのSTOP1は、被子植物のSTOP1が誘導する有機酸の放出や、アルミニウムイオンの排出によらず、強力なアルミニウム耐性を付与している可能性が示唆された。本課題では、ヒメツリガネゴケをモデルケースとし、STOP1の逆遺伝学的解析を通じて、種が独自に持つアルミニウム耐性機構の効率的解明を試みる。今年度は、ヒメツリガネゴケのゲノムにコードされる3つのSTOP1様の遺伝子を破壊した三重遺伝子破壊株の生理学的解析、遺伝子発現解析に取り組んだ。実験の結果、三重遺伝子破壊株は野生型株に比べ、アルミニウム耐性および低pH耐性の顕著な低下が見られた。次に、これら耐性に関わるSTOP1制御下の遺伝子の同定を行うために、RNA-seqによる網羅的な遺伝子発現解析の準備を進めていたが、たび重なる形質転換株の汚染により、当該年度内に実験を終了させることができなかった。そのため、本年度は形質転換株の汚染除去を進めつつ、網羅的遺伝子発現データから高精度にSTOP1制御下の遺伝子を同定するためのデータ解析環境の整備を進めた。今後は、早急に三重遺伝子破壊株に対する網羅的な遺伝子発現解析を実施し、STOP1遺伝子の制御下にあるコケ植物独自のアルミニウムおよび低pH耐性遺伝子の同定を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、H28年度中にRNA-Seqによる網羅的な遺伝子発現解析およびそのデータ解析によるSTOP1制御下にある遺伝子を同定する予定であったが、形質転換株の汚染が頻発し、実験計画が予定通りに進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、遅れている破壊株に対するRNA-seq解析を早期に実施し、STOP1遺伝子の制御下にあるコケ植物独自のアルミニウム耐性に関わる遺伝子の同定を進める。
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Causes of Carryover |
本課題内で用いるデータ解析サーバー (他課題との兼用) の稼働率が高まり、データの分析待ちが頻繁に生じる状況になったため、次年度予算で新たにサーバーを設置することを計画した。一方で、昨今の円安状況の中でサーバー関連部品の価格が高騰しているため、消耗品の購入費用は個人研究費など他の予算から捻出し、残金を翌年に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
遺伝子発現データの関連解析に使用するサーバーを新たに購入する。
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