2015 Fiscal Year Research-status Report
希少放線菌が形成する胞子嚢の休眠と開裂メカニズムの解明
Project/Area Number |
15K18669
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
手塚 武揚 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (80646414)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 希少放線菌 / 形態分化 / 胞子嚢 / 休眠 / 覚醒 / 二成分制御系 / 開裂 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では希少放線菌Actinoplanes missouriensisが形成する胞子嚢の開裂現象を材料として、休眠細胞が外界の環境変化を感知して覚醒し、栄養増殖へと移行する分子機構の全容解明を目的としている。本年度は、(1) 胞子嚢内部での胞子の休眠状態の維持に必須のヒスチジンキナーゼHhkAからリン酸基が転移されるHptドメインタンパク質の同定、(2) 同じく胞子の休眠の維持に必須のレスポンスレギュレーターTcrAの標的遺伝子の同定、および (3) 胞子嚢の開裂に関わると予想された遺伝子群の機能解析を行った。(1) については、Hptドメインタンパク質をコードする4遺伝子の破壊株の作製を試みたが現在までに取得には至っていない。これらの遺伝子が生育に必須である可能性もあるが、破壊株の作製法の改良および変更を行って取得を目指す予定である。(2) については、TcrAに対するポリクローナル抗体を用いてウエスタンブロット解析を行い、TcrAが胞子嚢形成期に強く発現していることを示した。この培養条件の細胞を用いて、抗TcrA抗体によるChIP-Seq解析を行ったが、残念ながら回収したDNA量が極めて少なく、解析に供するに足るシーケンスデータを得るには至らなかった。そこで、これまでに同定しているTcrAの結合領域から、TcrA結合配列を予想し、in silico解析によりTcrAの標的遺伝子の候補を抽出した。得られた候補遺伝子の上流領域について、競合ゲルシフト解析によりTcrAタンパク質の結合の有無を解析し、過去に行った野生株とtcrA破壊株のRNA-Seq解析の結果と合わせてTcrA標的遺伝子群を決定した。(3) については、セリンプロテアーゼ遺伝子2つと、胞子嚢開裂時特異的に転写量が増大する遺伝子1つの破壊株を作製したが、残念ながら胞子嚢の開裂能に影響は観察されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画に記載したHptドメインタンパク質をコードする4遺伝子の破壊株の取得に至っていないため、これらの破壊株を早急に作製する必要がある。また、TcrAのChIP-Seq解析を計画していたが、条件検討を行った結果、実施は難しいと判断し、in silico解析と競合ゲルシフト解析を行った。当初予期していなかった事態であるが、TcrA標的遺伝子の同定については一定レベルの網羅性を持って達成できた。胞子嚢の開裂に関わる遺伝子の破壊株の作製については、当初予定していた全ての破壊株の取得には至らなかった。残る遺伝子破壊株の作製を早急に進める。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに完了していない研究計画の実施を最優先に進める。Hptドメインタンパク質をコードする遺伝子破壊株を取得し、HhkAからリン酸基が転移されるタンパク質の候補を絞るとともに、TcrAへのリン酸リレーが存在する可能性を検討する。また、リン酸化によりTcrAの機能にどのような変化が起こるのか解析を進める。並行して、これまでに同定したTcrA標的遺伝子群の機能解析を行う。また、胞子嚢の開裂に関わると予想される遺伝子群についても、取得できていない破壊株の作製を早急に行う。
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