2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K18671
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Research Institution | Kyoto Gakuen University |
Principal Investigator |
井口 博之 京都学園大学, バイオ環境学部, 講師 (30712020)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 光応答 / ストレス耐性 / 色素生産 / 植物定着 / 葉面細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
微生物の生息場所の中で、植物葉上は特に強い光を受ける環境である。太陽光に由来する熱や紫外線は害ともなるため微生物はそれらへの対処が必要である一方、微生物は光をシグナルとして感知して環境の変化に巧妙に適応していることも予想される。本研究では、葉面細菌の生態や生存戦略についての知見を深めるため、「光に対して葉面細菌はどのように応答をするのか」明らかにする。本年度は下記2項目を研究した。 (1)自然環境中の葉面細菌が持つ光応答性の表現型の調査 自然環境中の葉から細菌を分離し、それらを明所と暗所に置いた寒天培地上で培養して、目に見えて異なる表現型を示す菌を探した。その結果、試験した80株より1株の光応答性の表現型を示す菌が見つかった。本菌は、Massilia属に属し、光照射により黄色色素の生産が誘導された。 (2)Methylobacterium属細菌における光応答機構の解析 本菌は、種々の植物葉に生息する代表的な葉面細菌であり、遺伝子操作技術も開発されていることから、光応答機構を分子レベルで解析するための対象とした。まず、光照射下で様々な培養試験を行った結果、光照射がM. extorquensの生育、UV耐性、熱耐性、バイオフィルム形成に正または負の影響を与えることが判明した。 本菌のゲノム中には、推定の光センサー遺伝子(LOV、BLUF、PYP、Phytochrome)が合計11個ある。いずれの遺伝子が、UV耐性などの形質を光依存的に制御しているか調べるため、まず4遺伝子の破壊株を作成した。現在、遺伝子破壊株の表現型を解析中であるが、いくつかの破壊株で植物上での生育(植物定着能)の低下が認められ、本菌が持つ光応答システムが植物上で正に働いていることが示唆されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自然環境中の植物葉から回収した細菌を対象にスクリーニングを行い、光応答性の表現型を持つ細菌を取得することができた。構築したスクリーニング実験系の有効性が確認でき、引き続いて行うことで新たな菌の取得が期待できる。 光応答制御機構の研究においては、M. extorquensが持つ光応答性の形質を複数明らかにすることができた。光センサー遺伝子の破壊株の作成も順調に進んでいる。今後、作製した遺伝子破壊株の表現型解析や、光センサータンパク質の特性解析を行うことで、本菌の光応答制御機構を明らかにしていくことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
主に下記の3研究を並行して進めていく。 (1)自然環境中から光応答性の表現型を持つ葉面細菌のスクリーニングを引き続き行い、新規な光応答性細菌を取得する。見つけた光応答性の表現型については、葉上での発現・役割を調べる。 (2)M. extorquensの光センサー遺伝子破壊株の表現型を解析し、光応答性の表現型に関与する光センサーを同定する。光センサータンパク質の発現を行い、その光吸収特性や相互作用するタンパク質・DNAを解析する。 (3)葉面での光エネルギー利用に関する知見を得るため、Methylobacterium属細菌が持つロドプシン遺伝子の発現あるいは破壊を行い、in vitro及び植物上でのロドプシンの機能を解析する。
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Causes of Carryover |
計画通りに予算を使用できている
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
特段の残額ではない
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Research Products
(1 results)