2015 Fiscal Year Research-status Report
次世代発酵技術のための酸化発酵の理解:追随する細胞内代謝の制御
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15K18673
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
阿野 嘉孝 愛媛大学, 農学部, 准教授 (00403642)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 酢酸菌 / 酸化発酵 / 発酵生産 / 代謝制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
「酸化発酵」は、多彩な糖類を細胞外で強力に酸化して、ほぼすべての酸化生成物を培地中に蓄積する酢酸菌に特徴的な代謝系である。本代謝系は次世代発酵技術の基盤としても魅力ある反応系であり、その理解が求められている。最近、自然発生的変異株が単離され、酸化発酵に追随して、蓄積した生成物を細胞内に取り込み・資化・再増殖する現象が確認された。このことは、酢酸菌は酸化生成物の資化能を有しているにも関わらず、潜在的に抑制して酸化発酵を進めていることを示し、生理学的に興味深い。本研究課題は、酸化発酵を利用する上で新たな課題として見出された「追随して進行する細胞内代謝」の分子機構を解明して酸化発酵の理解を深め、その知見を新規発酵技術に展開することを目指している。平成27年度は、以下の研究を行い下記のような成果を得た。
1.5KGAの資化に関わる分子群、とくに5KGAの細胞内輸送に関わる遺伝子の探索と同定 ゲノム公開株について希少糖5KGAの細胞内輸送に関わる輸送体遺伝子の特定に注力した。ゲノム情報から、5KGA資化に関わる酵素近傍に位置する推定輸送体遺伝子に着目し破壊株を作成した。野生株は生成した5KGAを細胞内に取り込んで再増殖するのに対し、遺伝子破壊株は、培地中に安定に5KGAを蓄積するようになり再増殖はみられなかった。自然発生変異株についても、当該遺伝子の破壊により5KGAの安定生産が可能となったことから、本遺伝子が5KGAの細胞内輸送に寄与していることが明らかとなった。興味深いことに、公開されている酢酸菌のゲノムを広く調査すると、本遺伝子の相同性および周辺遺伝子の配座に基づいて2つのタイプに分類でき、このタイプの違いが5KGA輸送能に密接に関係していることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の目標であった5KGAの細胞内輸送体遺伝子の同定について、ゲノム公開株についてはすでに完了した。現在、自然発生株と野生株の輸送体遺伝子における変異について調査しているところであり、大幅な遅延なく進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度以降については、5KGA細胞内輸送体の機能および発現調節について明らかにするために、以下のような研究を推進していく。
平成28年度には、5KGA輸送体の機能を明らかにするために、扱いやすく進行の早いゲノム公開株を中心に解析を進めていき、遺伝情報が乏しい自然発生変異株については、ゲノム公開株の情報を参考にしながら進めていく。
平成29年度には、5KGA輸送体の発現調節について定量的リアルタイムPCRを行いながら、代謝変化の誘引に寄与するシグナルおよび転写調節因子について明らかにしていく。
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Research Products
(4 results)