2016 Fiscal Year Research-status Report
枯草菌胞子を用いた有用多糖類合成系の確立に向けての基礎研究
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15K18675
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
安部 公博 法政大学, マイクロ・ナノテクノロジー研究センター, 研究員 (10748940)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 枯草菌 / 胞子 / 多糖類 / 部位特異的DNA組換え |
Outline of Annual Research Achievements |
枯草菌胞子最外層多糖類合成に関与するspsMはSPβプロファージの挿入により2つに分断されていることが明らかとなっている。胞子形成期になると、SPβプロファージにコードされるSprAが、プロファージ領域末端に位置する特定の塩基配列間(attLおよびattR)で部位特異的DNA組換えを引き起こすことによって、spsMが1つの遺伝子に再構築されることが報告されている。本年度は、この切り出し反応の詳細を分子レベルで明らかにすることが出来た。SprAは、SPβファージとspsM内の特定の塩基配列(attPおよびattB)を認識し、部位特異的DNA組換え反応を触媒した。SprAはファージDNAの挿入反応を単独で触媒するが、切り出し反応には補助因子としてSprBを必要とした。原子間力顕微鏡を用いることにより、attLとattRの各々に結合したSprA-SprB複合体同士が会合し、DNA組換えが起こる様子が観察できた。また、SprBは、切り出し反応を促進する一方、attP-SprAとattB-SprAの会合を阻害することにより、挿入反応を抑制することが明らかとなった。SPβ溶原菌において、SprAは対数増殖期に最も発現し、胞子形成が進むと発現が減少するが、SprBは胞子形成期中期から終期に至るまで発現する。したがって、胞子形成期ではSprBが過剰量存在することになり、切り出されたSPβファージDNAのspsMへの再挿入が阻害されるため、充分な量のSpsMが発現されることが示された。この原理を利用して、枯草菌ゲノム上の任意の場所にattLとattRを挿入し、SprAとSprBを発現誘導した結果、数十kb程度のDNA領域であれば容易に染色体から欠損できた。これらの知見は、枯草菌多糖類遺伝子群の欠損や別種由来の有用多糖類合成遺伝子群の導入を行うための技術に応用できると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H28年度の研究から、spsM遺伝子活性化の分子的なメカニズムが明らかとなり、その成果を投稿論文にまとめることが出来た(現在、査読中)。また、今回得られた知見は、最終年度に行う予定である異種生物の多糖類合成遺伝子群の導入に用いるための新技術として利用できると期待されるため。
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Strategy for Future Research Activity |
枯草菌胞子最外層の多糖類の形成と付着には、胞子コートタンパク質が必要である。本研究課題進行中に、胞子から多糖類を含む最外層を精製する技術が既に確立できている。今後は、多糖類層がどのように胞子最外層に結合しているかを明らかにするために、最外多糖類層に含まれる多糖類の付着に必要な胞子コートタンパク質を同定する。また、H28年度に得られた知見をもとに枯草菌多糖類合成遺伝子群の欠失と異種由来の多糖類合成遺伝子群の導入方法についての検討を行う。
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Causes of Carryover |
H28年度に予定していた出張(学会出席)の1つを見送ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度の未使用額は、本研究の成果を論文出版や学会で発表するの為の経費として使用する。
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