2015 Fiscal Year Research-status Report
鞭毛形成マスターレギュレーターFlhD4C2による代謝制御機構の解明
Project/Area Number |
15K18676
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
高田 啓 立教大学, 理学部, ポストドクトラルフェロー (70747899)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 大腸菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
環境中の微生物は栄養源の遷移を量・質ともに正確に感知し、それら栄養源に細胞内代謝を最適化することで環境変化に適応している。この適応機構には増殖形態の変化を伴い、その代表的な例として、鞭毛形成・バイオフィルム形成がある。この両形態はbistable(双安定性)な関係性にあり、細胞集団中の個々の細胞は生長環境に応じて、そのどちらの増殖形態を選択するか常に迫られている。本研究では大腸菌の鞭毛形成マスターレギュレーターFlhD4C2 に着目し、Genomic SELEX法を用いた網羅的解析により同定した新規FlhD4C2制御候補遺伝子群の解析と、栄養源の遷移に伴ったこれら遺伝子群の動態を解析することにより、生長環境を感知しながら生き残り戦略を選択していく過程の全体像の把握を目指し、実施したものである。初年度はまず、鞭毛形成マスターレギュレーターFlhD4C、2バイオ・バイオフィルム形成マスターレギュレーターCsgDの両者の転写発現が双安定性の関係にあるかどうか再検証するため、各Promoterの下流にsfGFPを融合したレポータープラスミッドを作製し、LB培地において増殖フェイズに応じて、1細胞レベルでflhDC及びcsgDの発現誘導を比較・検討した。その結果、時期特異的な発現のbistabilityを確認することができた。また、合成培地において各培地成分を変動させることで、これら遺伝子の発現変動に影響を与える栄養源の同定を試みている。また、この構築したレポータープラスミッドを元に、Genomic SELEX法を用いて同定した新規FlhD4C2制御候補遺伝子群の発現変動を、一細胞レベルで解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一細胞レベルでの転写変動観測系の構築により、flhDC及びcsgDの転写活性化時期の同定及び、その発現レベルに多様性があることを見いだすことができた。 Genomic SELEX法を用いて同定した新規FlhD4C2制御候補遺伝子群の多くは中央代謝系に関与する遺伝子であり、これら遺伝子群の転写制御には既に複数の転写制御因子が関与していることが報告されている。そのため、各制御候補遺伝子において、FlhD4C2による転写制御が決定的に作用する時期を同定するのに多くの時間をかけることとなった。一方、これら遺伝子群に関して、一細胞レベルでの転写変動を検証することで、当初想定できていなかった新たな知見も得つつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の計画を継続するとともに、新規FlhD4C2制御候補遺伝子群のうち、機能道の転写因子に関して解析対象とし、転写因子間のヒレラルキー性に関しても検証していく予定である。
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Causes of Carryover |
成果を海外英文誌に投稿するための準備をしていたが、論文の実験を含む改訂を要し、今年度投稿することができなかったために予定した掲載料分が残額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文受理の段階で支払いに当てる予定である。また、当該年度の予算に関しては、当初より予定していた消耗品費や旅費、論文投稿関連経費として使用する予定である。
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