2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K18683
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
村瀬 浩司 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (50467693)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | タンパク質構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の多くは自らの花粉を拒絶し、他個体由来の花粉でのみ受精する自家不和合性と呼ばれる機構をもつ。アブラナ科植物の自家不和合性はSと呼ばれる一遺伝子座の複対立遺伝子によって支配され、花粉側および雌しべ側のS遺伝子型が一致したとき花粉の拒絶が起こる。アブラナ科のS決定因子はすでに同定され、雌しべに存在する受容体キナーゼSRKと花粉に存在するリガンドSP11のS特異的な相互作用により自他識別が行なわれているが、その特異性を決めるメカニズムは不明である。そこで本研究ではS決定因子およびその複合体についてX線結晶構造解析による自他認識とシグナル伝達メカニズムの解明を目的とする。 本年度はSRKの細胞外領域についてタンパク質の大量発現を行った。SRKはバキュロウイルスを用いた昆虫細胞の発現系を用いて培地中に分泌させた。培養上清を限外ろ過によって濃縮し、FLAGビーズによるアフィニティー精製、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーによって単一のバンドに精製した。250 Lの培養上清から約5 mgのSRKタンパク質を得ることができ、収率は30~40 g/Lであった。得られたバンドはプロテインシーケンスを行ってSRKタンパク質であることを確認した。SRKタンパク質の分子量をMALDI-TOF-MS解析により測定したところ、計算分子量よりも約2,200 Daほど大きい値を示し、糖鎖修飾を受けていると考えられた。SRKについて384条件で結晶化スクリーニングを行ったところ、1条件で棒状の結晶が得られた。再現を試みたが、結晶の成長性が悪く、単体の結晶化は難しいと判断された。次にSRKとSP11を混合して同様に結晶化スクリーニングを行ったところ、22条件でダイアモンド型もしくは棒状の結晶が得られた。今後はこれらの結晶について解析を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は目標であったSRKの大量発現と結晶化スクリーニングを行い、タンパク質結晶を得ることに成功できた。この成果により、本研究のゴールに大きく前進した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は本年度得られたタンパク質結晶化条件を精密化して、X線回折データを得られる大きさの結晶を作製する。目的のサイズの結晶が得られたら高輝度放射光施設SPring-8にて回折データを収集する。また、セレノメチオニン誘導体を作製して、多波長異常分散法もしくは短波長異常分散法にて位相決定を試み、SRK-SP11複合体の立体構造解明を目指す予定である。
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Causes of Carryover |
本研究は想定より順調に進んだため、必要とする物品費が節約できた。また、機器類の修理費用が発生しなかったため、見積もっていた費用を次年度に使用することにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度はSRKのセレノメチオニン誘導体を使って結晶を作製するが、セレノメチオニンフリーの培地が高額であるため、本年度はこの培地の購入費に多くが使用されると予想される。その他は申請の予定どおり使用する予定である。
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[Journal Article] Generation of transgenic Linum perenne by Agrobacterium-mediated transformation.2015
Author(s)
Murase, K., Sugai, Y., Hayashi, S., Suzuki, Y., Tsujii, K., Takayama, S.
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Journal Title
Plant Biotechnology
Volume: 32
Pages: 349-352
DOI
Peer Reviewed