2016 Fiscal Year Research-status Report
酵素合成リグニンポリマーを応用した非侵襲性新規免疫アジュバントの開発
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15K18701
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
山中 大輔 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (70734599)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | リグニン / 抗原リグニン複合体 / DDS / 抗原特異的IgE |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではフェニルプロパノイド類を酵素重合したリグニンモデルポリマーを用いて,抗原の効率的かつ安全性の高い輸送システムを構築することを目的としている。平成28年度は,主にカフェ酸重合ポリマーとOVA抗原の複合体をマウスへ投与し、抗OVA抗体産生誘導作用について評価した。予備検討で行った経口投与では、十分に抗体を誘導するには至らなかったため、腹腔内投与、経鼻投与を行ったところ、いずれの投与方法においても抗OVA-IgGを強力に誘導することができた。誘導されたIgGサブクラスを解析したところ、抗原-リグニン複合体は抗原-リグニン混合物と比較して、IgG1の産生誘導量は低いにもかかわらず、IgG2aは同程度に誘導している事が明らかとなった。これは複合体形成によって、Th1型サブクラス抗体の産生誘導が増強されることを示唆している。 また、抗原-リグニン複合体のアナフィラキシー誘発能を評価するため、OVA-IgEとラット好塩基球様株RBL-2H3を用いたin vitro脱顆粒評価系を用いて、リグニンOVA複合体によるヒスタミン放出誘導作用を評価した。その結果、リグニンOVA複合体は抗OVA-IgEとの結合能が低いにもかかわらず、抗OVA-IgE存在下でヒスタミンの放出を誘導している事が明らかとなった。そこでヒスタミン放出量を軽減させるために複合体作成方法を見直し、最終的に複数のタイミングでリグニンプレカーサー(カフェ酸)を添加することで、よりIgE結合性の低い複合体を作製することに成功した。今後の検討では、より安全性の高い抗原-リグニン複合体の作製を目指し、いくつかの手法で作製された複合体によるヒスタミン放出作用を評価し、最終的に実験動物を用いて抗アレルギー作用の検証を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に予定されていた検討項目は,概ね実施することができた。ただし研究ツールの普及率から、複合体作成に用いる抗原をペプチドからタンパク質に変更したため、抗原提示能に関する評価については、ペプチド複合体を用いた予備検討にとどめている。抗体誘導作用に関しては腹腔内投与の経路も含め、十分に評価を行う事が出来たため、計画以上に結果を得る事が出来ている。一方、安全性の評価において最善の結果が得られていないため、さらに改良を重ね、繰り返し評価を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題における重要課題の一つである安全性を検証するために、in vitro評価系を構築し、本研究で作製した抗原-リグニン複合体のヒスタミン放出活性に関してスクリーニングを進めている。いくつかの候補試料に関しては、in vitro評価系と平行してIgG産生誘導能を評価していく。また抗体産生における分子メカニズムの解析も同様に進めてきた結果、いくつかの新たな知見を得る事が出来たため、メカニズム仮説に関してin vivoにて評価を進めて行きたい。これまでよりも安全性の高い抗原-リグニン複合体を作製し、その抗アレルギー作用に関して評価を進める。
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Causes of Carryover |
2年目は試料の安全性評価を動物実験では行わず、in vitro評価系を構築し、複数の試料の評価を効率的に行ったため、次年度使用額が生じている。安全性評価のための動物実験は最終年度に行うことを予定しているため、一部の予算を次年度へ移行することが最善であると判断した
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究で必要とされる機材は概ね所属研究室内で維持できているため、機械類の新規購入は考慮していない。大部分は消耗品費に充てる予定であり、購入予定物品に大幅な変更は無い。また、高品質な抗OVA-IgEや、ヒスタミンの定量に用いる測定試薬の購入などは前年度に済ませているため、引き続き試験を行うことは可能である。一方、in vivo評価系を進めるため、複数匹の実験動物を購入する必要があり、これらの購入に次年度使用額を充てることで対応したい。
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