2015 Fiscal Year Research-status Report
冬期の休眠がスギの成長に与える影響とその分子メカニズムの解明
Project/Area Number |
15K18716
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
能勢 美峰 国立研究開発法人 森林総合研究所, 育種センター, 研究員 (20582753)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 休眠 / スギ / 成長 / 冬期 / 遺伝子発現 / 代謝産物 |
Outline of Annual Research Achievements |
スギの成長は、形質データと気象データを用いた統計解析の結果から冬期の気温と高い相関を示すことが報告されており、今後、気候変動に伴う冬期の気温上昇の影響を受けることが予測される。本研究では、スギの冬期の生命現象を理解するため、分子レベルから休眠の詳細なステージングと制御メカニズムの解明を目的に進めている。また、冬期の休眠がその後の成長にどのような影響を与えるのか、人工気象室を用いた実験を進めている。 スギの休眠ステージを示す指標として、休眠期に発現量が変化する遺伝子をマーカーとして用いることができると考えた。これまでの研究で年間を通してトランスクリプトームの変化をマイクロアレイ法で解析しており、このデータからマーカーとなりうる遺伝子を選抜した。これらの遺伝子の冬期の発現動態をリアルタイムPCR法で詳細に解析した。また、代謝産物は季節によって変化しており、冬期に増加する産物は休眠期の特性を示すと推定された。そこでGC-MS分析を用いて、スギのシュートの冬期と夏期の代謝産物の違い明らかにした。 休眠期間の長さとその後の成長の関係を明らかにするため、自然条件下で成育したスギのポット苗を休眠期の4時期(11月、12月、2月、3月)に成育に適した条件に設定した人工気象室に移動させ、その後の伸長成長を継続的に測定している。これまでの結果、人工気象室に移動させた時期が遅いほど成長量が増加した。このことから、休眠期間が長いほど次の成長期の成長量が増加すると推定され、冬期は次の成長に向けた貴重な準備期間である可能性が示唆された。しかし、クローンによっては休眠期の長さは成長量に影響しなかったことから、休眠中の生命現象には種内変異が存在すると推定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画にGC-MS解析を加えた点が若干異なるものの、順調に進んでいる。休眠期の分子メカニズムの解明を進めるためには遺伝子発現解析だけではなく代謝産物解析を行う必要性があると考えGC-MS解析を行った。一方で今年度予定していたマイクロアレイ法による網羅的な遺伝子発現解析を次年度以降に先送りした。これらのことから総合的に考え、今回の進捗状況の区分を(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
休眠ステージが遺伝子レベルでどのように制御されているのか、休眠期間中の遺伝子の時系列的な発現パターンを、マイクロアレイ法を用いて網羅的に解析する。そのデータを用いて遺伝子発現のネットワーク解析を行う。これによって、遺伝子間の相互作用を推定するとともに、多くの遺伝子に影響を与える休眠において重要な遺伝子を明らかにする。また、今年度得られた代謝産物データとともに、冬期の休眠の生命現象について考察する。
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Causes of Carryover |
産休に入り、当初、予定していた実験を復帰後に延期した。そのため、実験に用いる物品の今年度の購入を取りやめた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
育児休暇からの復帰後、今年度予定していた実験を行う予定である。その際、実験に必要な物品の購入に使用する。
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