2015 Fiscal Year Research-status Report
福島県における天然特用林産物の供給サービス変容過程の解明と将来予測
Project/Area Number |
15K18717
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
松浦 俊也 国立研究開発法人 森林総合研究所, 森林管理研究領域, 主任研究員 (00575277)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 特用林産物 / 山菜・きのこ / 福島第一原子力発電所事故 / 生態系サービス / 将来予測 |
Outline of Annual Research Achievements |
福島第一原発事故は広範囲の山林を放射能汚染し、森林がもたらす恵み(生態系サービス)とりわけ供給・文化サービスを大きく低下させたと考えられるが、その実態把握は進んでいない。本研究の目的は、この実態を定量的に把握し、将来予測を行うことである。そこで、福島県内のうち、福島第一原発から15~30km圏の阿武隈山地に位置する双葉郡川内村と、130~170km圏に位置する南会津郡只見町を対象に、原発事故前後での山菜・きのこ採りや渓流釣りなどの山林利用の変化を聞き取りや小規模な予備的な質問紙調査で概観した。さらに、川内村の村内生活世帯全戸(約600世帯)と、只見町明和地区の全戸(約500戸)を対象に、各世帯で山にもっとも関心のある方1名ずつに、原発事故の前後で山菜・きのこ採りや渓流釣りなどの活動がどのように変化したかを捉えるための質問紙調査を実施した。質問項目は、震災前後それぞれにおける、月毎の採取活動頻度、使途割合(自家消費、贈答、販売)、贈答先の数、採取活動をする/やめた理由、事故がなければどのような森林利用をしたかったか、採取や栽培の対象種、落ち葉堆肥利用などである。その結果、それぞれ6割弱から7割近くの高い回収率を得られ、原発事故後に採取活動の頻度や贈答先が大きく減少した実態を捉えられる貴重なデータが得られた。また、両対象地における植生、地形、道路・林道、空間線量率などの各種地理情報の収集・整備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
福島第一原発から近い川内村と遠い只見町それぞれにおいて、原発事故前後での山林利用変化の実態を定量的に捉えるための十分なサンプル数・回収率の質問紙調査を実施できた。また、町地域において各種地理情報の準備も進められた。このように、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
両地域それぞれにおける質問紙調査の結果を集計・比較し、原発事故前後での山林利用変化の実態や、年齢階層などによる違いを明らかにする。また、聞き取り調査によって、主な山菜やきのこの採取地の分布や採取活動の特徴を捉える。可能であればGPSロガーや個人線量計等を用いた調査も併用する。そして、地形、植生、道路・林道などの各種地理情報を用いて採取地の分布特徴や原発事故前後での採取地の地理的範囲の変化等の把握を試みる。さらに、人口動態、人々の活動変化、放射性セシウムの物理的減衰などの中で、将来の山林利用の量や範囲がどのように変化するかを将来予測し、供給・文化サービスの継承の可能性を探る。
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Causes of Carryover |
原発事故の森林文化サービスへの影響を捉える関連研究プロジェクトの内容を加えた質問紙調査を共同実施することで、予定よりも郵送料などを抑えることができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続き、現地調査や学会発表の旅費、研究補助アルバイト人件費、追加的な質問紙調査に必要な郵送料などの経費、英文校閲費、データロガーや解析機器・ソフトウェア等の物品費等に使用予定である。
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Research Products
(3 results)