2016 Fiscal Year Research-status Report
エゾアワビの繁殖の個体差と個体間相互作用が個体群動態に与える影響
Project/Area Number |
15K18734
|
Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
松本 有記雄 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 東北区水産研究所, 研究員 (60700408)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | エゾアワビ / 加速度ロガー / 個体ベースモデル / 蝟集行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、以下の2つの研究に取り組んだ。 (1)エゾアワビの産卵と時化の関係を明らかにするために、これまでに開発した加速度ロガーを雌に取り付け、水深3~5m(浅場)と水深10m(深場)に放流した。産卵行動は、時化以外では確認されなかった一方で、9月8~13日の低気圧通過時には産卵行動が確認された。産卵前後の流速,水温、塩分、気圧を照らし合わせたところ、降雨と時化の影響と思われる塩分の低下が、浅場では8~9日において、深場では9日と12~13日において生じており、塩分が23~27まで低下した後に産卵していることが確認された。雨水には、種苗生産での産卵誘発剤である過酸化水素が含まれていることから、天然での産卵は、時化による攪乱で雨水が海底に届くことで誘発されている部分があるのかもしれない。また、本研究の結果は、生息水深によって産卵のタイミングが異なることを示している。
(2)体外受精種であるアワビ類においては、動力に乏しく,時化に伴う何らかの環境変化をトリガーとして放精放卵するため,産卵時の個体間距離が受精率に影響する。そこで、アワビが這った後に残る匍匐粘液に着目し,本種が他個体の匍匐粘液を追従することを水槽実験で検証した。次に,シミュレーションモデルを作成して,互いに匍匐粘液を追従するというルールで,野外の状況に近い蝟集が再現できる一方で,匍匐粘液を追従しない場合は他個体との遭遇率が野外よりも低くなることを確かめた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた生息水深と産卵タイミングの関係だけでなく、野外での産卵を誘発する物質の解明にもつながる結果が得られつつある。また、蝟集状態をモデル上で再現できつつあり、個体群動態に与える受精率の影響も検討できるようになった。現在、アワビ類の個体数は減少しており、蝟集できなくなるとともに受精率が著しく低下する可能性が懸念されているが、本モデルは個体群維持に必要な最低限の個体数を予測するのに役立てられる可能性がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、加速度ロガーによる産卵行動のモニタリングを実施し、昨年度得られた結果の再現性を確認する。また、個体ベースモデルの作成を進め、時空間的に変動する蝟集状態と生息水深による産卵タイミングの違いが個体群動態メカニズムに与える影響の解明に取り組。
|
Causes of Carryover |
年度末に開催された日本水産学会の参加に際して、当初資料代を含めた参加費を執行する予定だったが、web上で資料が公開されたことから、資料の購入を中止し、その結果500円の残額が発生した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
野外調査の必要な機材や物品の更新および補充に使用する。
|
Research Products
(2 results)