2016 Fiscal Year Research-status Report
マサバ管理はゴマサバを回復させるか?―多魚種漁業における努力量管理の影響評価―
Project/Area Number |
15K18737
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
市野川 桃子 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 中央水産研究所, 主任研究員 (30470131)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Individual quota / 努力量管理 / 個別割当制 / 持続的利用 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年はマサバの漁場の時空間分布の把握と、本魚種に試験的に導入されたIQ管理に対する漁業者の動態の変化を中心に解析をおこなった。本年度は、IQ管理が導入される前に実施されていた努力量管理の中から、巻き網の投網時間・回数制限管理に着目し、これらの管理がTAC管理下でどのような効果を持っていたかの定量的な評価を行った。内容と結果の概要は以下の通り。 日本で漁獲されるサバ類(マサバ・ゴマサバ)には年間の総漁獲量を制限値(TAC)で制限する漁獲量管理が実施されている。漁期中のTAC枠の超過を防ぎつつ早獲り競争(race-to-fish)を回避するため、本資源を漁獲する巻き網漁業では、多岐にわたる努力量管理が実施されている。本解析では、2011年から2013年に実施された様々な努力量管理(臨時休漁・投網回数制限・操業時間制限)の実施状況を把握し、これらの努力量管理がどの程度の漁獲量の削減につながったかを一般化線形モデルによって予測した。これらの解析の結果、投網制限は2011年から2013年の努力量を約3割、漁獲量を約2割削減する効果があったことが示された。 近年では、早獲り競争の回避にはIndividual Quota(IQ)が効果的であることが注目されている。一方で、卓越年級や漁況・海況の時間・空間変動が漁獲効率を大きく変化させる浮魚資源の管理においては、漁況や海況に応じた努力量管理の柔軟な設定により、早獲り競争を回避できる実例を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マサバとゴマサバの漁獲・努力量動態を実データをもとに統計モデルで予測するモデルを構築し、投網制限を用いた努力量管理の影響を定量化することができた。近年では、早獲り競争の回避のために漁業者個人や個々の団体にあらかじめ年間の漁獲枠を割り当てる個別割当制(Individual Quota, IQ)の有効性が世界的に確かめられているが、IQでなく直接的に努力量をコントロールする努力量管理によっても早獲り競争を回避することができる実例を示すことができた。これにより、昨年度まで行っていた休漁を用いた努力量管理手法と併せることによって、巻き網漁業にいて実施されてきた代表的な努力量管理手法の影響評価を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、マイワシ・ゴマサバ・ブリの漁場を重ねあわせることにより、複数種を漁獲するまき網漁業における魚種選択戦略についてのモデルを作成していく。具体的には、まず、他魚種の漁場分布マップを作り、漁場移動の図を作る。さらに、昨年度までに実施した様々な管理方策(IQ、休漁や投網制限を用いた努力量管理)の効果をモデル化し、効果的な管理方策を検討する。
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Causes of Carryover |
論文投稿の準備が遅れたため、それに必要な英文校閲費・論文投稿料がかからなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度予定していた論文投稿のための英文校閲・投稿料として用いる。
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