2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K18742
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
佐藤 晋也 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 講師 (80709163)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 珪藻 / 生殖 / ゲノム / トランスクリプトーム |
Outline of Annual Research Achievements |
今日の生態系において大いに繁殖している珪藻の性に関する理解は、性の進化といった生物学的疑問を解くうえでの大きなヒントとなるだけでなく、珪藻が養殖稚仔魚や貝類の餌料やサプリメントの原料として使用されている点を鑑みると、養殖業への貢献といった産業的なメリットも見込まれる。本研究では有性生殖の誘導が可能な珪藻Pseudostaurosira trainoriiの雌雄株を材料として用い、これらの株間におけるゲノム構造や遺伝子発現パターンの違いを明らかにすることを目的として行った。次世代シーケンサーを用いた配列解読により、これまでに両株の葉緑体およびミトコンドリアゲノム配列がほぼ完全長で得られた。また核ゲノム配列についても、得られたスキャフォルドをもとに雌雄間の比較ゲノム解析を行い、雌雄差を見出すことができた。さらにRNA-Seq解析により雌雄株の栄養世代、および各性成熟段階における網羅的遺伝子発現パターンが得られた。これらをもとに性決定や性成熟を司る遺伝的因子の特定を目標とし、特に雌雄差や生殖に関係する領域に着目して遺伝子予測やその機能推定を進めている。また本種珪藻の生殖誘発と、培養株内に共存しているバクテリアとの関連が明らかになった。共存バクテリアに各種ストレスを与えることで珪藻培養株の性成熟を誘発することが可能となり、これにより交配実験を通じたアプローチとは全く異なる視点で珪藻生殖メカニズムの解明を目指すことができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験供試株が多糖等の夾雑物を大量に生産することから、核酸抽出法の条件最適化に予想以上の時間を費やした。複数方法を試験した結果、抽出プロトコルの最適化に成功し高純度の核酸を得ることが可能となったものの、これにより計画に若干の遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で得られた知見をもとに、珪藻性成熟メカニズムの遺伝的な理解が進むことと期待される。またそこから珪藻生活環のコントロールや人為改変といった技術開発へと発展するだろう。さらに本研究ではPseudostaurosira trainoriiの雌雄株から葉緑体およびミトコンドリアのゲノム配列が得られている。これらの比較ゲノム解析により雌雄間における構造多型も判明しており、生殖誘発が可能な本種の系を用いることで、珪藻ではほとんど知られていない細胞質遺伝様式についても研究が進むことと思われる。
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Causes of Carryover |
RNA-Seq解析に供するRNA試料調整に時間を要したため、使用計画を変更した。具体的にはサンプル性状解析から、実験対象が生育状態により異なる多糖成分を分泌することが明らかになったためで、これにより比較トランスクリプトーム解析に耐え得る均質なRNA試料を得ることが困難であった。RNA抽出方法をサンプル状態にあわせて最適化することに成功したため、次年度にRNA-Seq解析を行うこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画に従い、予定していたRNA-Seq解析を行う。
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