2015 Fiscal Year Research-status Report
造礁性サンゴにおける遺伝子ノックダウン技術の確立と応用
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15K18744
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
湯山 育子 国立遺伝学研究所, 生命情報研究センター, 研究員 (80565995)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | RNAi / GFP / Thioredoxin / 造礁性サンゴ |
Outline of Annual Research Achievements |
造礁性サンゴ(以下サンゴと記載)は細胞内に褐虫藻を共生させており、褐虫藻の光合成産物を利用している。遺伝子発現解析によりサンゴ-褐虫藻の細胞内共生に関与する遺伝子が同定されつつあるものの、細胞内共生機構については未解明な部分が多い。その理由の一つとしては、サンゴではRNAintereference (RNAi)による遺伝子ノックダウン等、遺伝子発現を操作した実験が行われていないことが挙げられる。そこで本研究ではサンゴにおいてRNAi法を確立させる事を第一の目的とする。第二の目的としてRNAi法を確立した後、細胞内共生に関与する遺伝子をターゲットにしてRNAiを行い、各遺伝子の細胞内共生における機能について明らかにする事を掲げる。 27年度はまずGFPをターゲットにRNAiを行い、サンゴのGFPの発色量の変化を調べた。変態後の幼若ポリプにおいて、RNAi処理をしたサンゴでGFPの発色量の低下がみられ、RNAiがサンゴでも有効であることが考えられた。加えて、TioredoxinをターゲットにしたRNAi処理も行なったところ、RNAi処理をしたサンゴはコントロールに比べて高温化での死亡率が高いことがわかった。これまでの実験から、RNAiがサンゴのプラヌラ幼生か、幼若ポリプには有効であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、RNAi処理の実行をサンゴで条件を変えて行なったことがなかったが、今回手法や、様々な成長段階のポリプを使ってRNAiの効果を比較した。その結果、RNAiがサンゴには有効であることがはっきりし、より効果的な方法や、処理方法が明らかになった。今後の実験にその結果を生かすことができる。 28年度は条件検討をする必要がなくなり、多くの遺伝子をターゲットに処理することができるようになっている。サンゴのプラヌラ幼生は手に入るのが年に一度ということも考え、27年度からは他種のサンゴでも実施できるように遺伝子情報を集めている。2年目以降の実験の土台ができたという意味ではおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
RNAi処理の結果、ターゲット遺伝子の発現量に変化しているかどうか、qPCRでその発現量を確認していた。今後はwhole mount in situ Hybridizaitonも行い、実際にターゲット遺伝子の発現量の変化をより明らかにしていく。 また、RNAiに使用する共生関連遺伝子についての情報をさらに集める。サンゴと褐虫藻の共生に関与するとされる遺伝子配列をデータベースから検索。また、現在共生藻獲得に関連するサンゴ遺伝子の同定を進めているため、その解析結果をもとに本研究に使用する遺伝子を選別する。そして各遺伝子でRNAiに使用可能な配列領域を同定する。
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Causes of Carryover |
実験に使用する物品や試薬(顕微鏡用デジタルカメラやin situ hybridization 用試薬)の支払いが年度内に間に合わず、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度はRNAi実験法の確立することが主な目的で、ターゲット遺伝子を多く使用することがなかった。次年度はRNAi実験のターゲット遺伝子を増やし、さらに大規模にRNAi実験を行うため、現在残っている次年度使用額については、28年度から引き続きRNAiの実験用試薬購入に用いる。
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