2017 Fiscal Year Research-status Report
タイにおける福島原発事故後の日本産農水産物・食品の主体別輸入対応行動の総合評価
Project/Area Number |
15K18747
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
LUR PUANGKAEW 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食農ビジネス推進センター, 研究員 (30746524)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 原発事故 / 風評被害 / 日本産農水産物・食品輸出 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、タイにおける日本産農水産物・食品の輸入に関わる多様な主体の原発事故後の対応・取組の検証を試みた。具体的には、日本産農水産物・食品の輸入業者2社、日本産農水産物・食品を販売している小売業者2社、日本食レストラン2社に対する聞き取り調査を行い、風評被害の実態を把握するとともに、風評被害を払拭・克服するための対策の実践に関するそれぞれの主体の対応・取組を体系的に検証した。 聞き取り調査結果より、原発事故に伴う農水産物・食品の放射性物質汚染への懸念により、タイでも日本産農水産物・食品の購入や日本食レストランの利用が避けられるなど、風評被害が発生していることが確認された。特に原発事故から半年の間においては、水産物や水産加工品を取り扱っている業者を中心に被害が大きく、放射性物質検査費用増大、原材料転換・安全PRコストの発生、販売量・顧客減少、販売価格の低下、原発事故前に生産・製造された日本産農水産物・食品の買い占めなど、様々な影響が出ていることが明らかになった。 それぞれの主体の風評被害を払拭・克服するための対策の実践については、輸入業者の対応・取組として安全・安心を確保するための仕入先・商品の変更・開拓、正確な情報提供が、小売業者と日本食レストランの対応・取組として輸入業者への放射性物質の分析結果証明書の要求、消費者への迅速・正確な情報提供の実施、日本産農水産物・食品の安全性PRおよび日本食信頼回復イベントの開催等が挙げられる。こうした現地の輸入業者および小売業者等の風評被害払拭活動等により、タイ国内における風評被害の影響が大部分収束しているが、これまでに経験がない未知の放射性物質汚染の影響への根強い不安とそれを煽るマスコミの継続的な報道等から、今回の放射性物質汚染に起因する風評被害の影響は今後もしばらく続くことが予想されていることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、タイにおける日本産農水産物・食品の輸入に関わる多様な主体の原発事故後の対応・取組を検証するために、現地の輸入業者、小売業者、日本食レストランへの聞き取り調査を行ったが、輸入業者と小売業者の調査可能な事例の探索に時間がかかり、研究遂行に想定以上の時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き現地調査を行い、タイにおける日本産農水産物・食品の販売・流通実態を把握する。また、本年度が最終年度のため、原発事故後の日本産農水産物・食品に対するタイ消費者の安全意識・購買行動を明らかにするとともに、タイにおける福島原発事故後の日本産農水産物・食品の輸入に関わる多様な主体の対応行動を総合的に評価する。
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Causes of Carryover |
所属変更に伴う他業務の多忙のため、タイへの出張回数が少なかったため。また、運営交付金を活用し、本研究費での国内での出張旅費、物品費、人件費を抑えることができたため。次年度使用額は消費者へのアンケート調査の経費と旅費に当てる。
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