2016 Fiscal Year Research-status Report
家計の小型化と開放経済に向かう日本が目指すべき食料政策
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15K18751
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
谷 顕子 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (10709273)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 家計の小型化 / 食生活の変化 / 需要分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度に行った、戦後の日本経済の様相と家計の小型化との関係を明らかにするための研究手法に基づき、平成28年度は家計の小型化が日本の食料消費に及ぼす影響を解明するための実証分析を行った。 具体的には、次の1~3の手順にしたがって作業を進めた。 1.家計の生産活動である家事の技術的特徴は、家計の世帯員数が多いほど1人当たりの手間が少なくなる「世帯規模の経済」であり、家計の小型化は家事の生産効率を低下させ、家事の外注割合を増加させる。このことをふまえて、「家計の小型化は内食の割合を減少させ、調理済み食品や外食の割合を増加させる」という仮説の下で、家計の食料消費行動を「世帯規模の経済」を発現する生産活動として捉え、実証モデルとして定式化した。 2.実証分析に必要なデータを収集した。具体的なデータは、総務省『家計調査』『全国消費実態調査』『消費者物価指数』『小売物価統計』などである。ここで、分析モデルに合わせて、データの加工・集計を行い、長期パネルデータを作成した。 3.家計の食材需要について、家計の変貌を表す世帯属性を組み込み、戦後日本経済の画期ごとに食料需要体系を計測した。その上で、「日本経済の変動に対する調整として家計が変貌し、その結果、食生活が変化する」というパスに描かれた因果関係が観察されるかどうか検証を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
家計の生産活動である家事の技術的特徴は、家計の世帯員数が多いほど1人当たりの手間が少なくなる「世帯規模の経済」であり、家計の小型化は家事の生産効率を低下させ、家事の外注割合を増加させる。このことをふまえて、「家計の小型化は内食の割合を減少させ、調理済み食品や外食の割合を増加させる」という仮説の下で、需要体系分析により、家計の小型化が日本の食料消費に及ぼす影響を計量的に解明した。 これらは、当初の研究計画に沿って、おおむね順調に研究を進行していると評価できる状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果をもとに、農業を含む日本経済の枠組みが開放経済に向かう場合、国産及び輸入農産物の需要見通しについて明らかにすることを今後の研究推進方策とする。家計の小型化は内食の減少、調理済み食品や弁当など中食(なかしょく)と外食の増加を招いたことを平成28年度で明らかにしたので、今後は内食、中食、外食それぞれの食材としての農産物の輸入依存度を推計し、内食から中食、外食に向かう日本人の食生活の変化と、その食材である農産物の輸入依存度との関係を明らかにする予定である。
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