2017 Fiscal Year Annual Research Report
Reducing Family Size and a Desirable Japan's Food Policy toward the Open Economy
Project/Area Number |
15K18751
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
谷 顕子 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (10709273)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 家計の小型化 / 食料消費 / エンゲル関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
戦後、日本では一世帯当たりの人数が一貫して減少し、家計の縮小に歯止めがかからない。高度成長期には核家族世帯が増加し、その後、高度成長が低成長に転換した以降の70年代中盤から女性の社会進出が旺盛になったことで、少子高齢化が始まる。90年代以降、単身世帯の増加が顕著となり、今後、家計の小型化はさらに進行することが予想される。 その一方で、家計間の所得格差の拡大が一つの社会問題として注目されている。本来、家計は我々にとっての最小のセーフティネットの役割をもっており、所得格差の拡大に伴う貧困世帯の増加は、開放経済に向かう日本の食料政策を考える上で極めて重要な課題となっている。 そのため、本研究では(1)配偶者の就業状況と子供の有無が与える食料消費行動への影響,(2)他の家族形態と比較して貧困に陥りやすい母子世帯に着目した食料消費の特徴,(3)少子高齢化の進展とともにその比重が高まっている高齢世帯に着目した食料消費の特徴,という3つの点を明らかにするため、それぞれの世帯属性の特定が可能な総務省『全国消費実態調査』匿名データを利用して、Working-Leser型エンゲル関数の計測を行った。 その結果、(1)就業形態の違いによる時間制約の強度の差は食料消費行動に影響をもたらすが、子供の存在によって平準化されること、(2)より強い所得制約と時間制約に直面している貧困母子世帯では、内食材料の支出弾力性は非貧困世帯のそれよりも大きく、外食の支出弾力性は非貧困世帯のそれよりも小さいこと、(3)国産農産物志向の強い高齢夫婦世帯であっても、所得水準が高まれば食生活の外部化が進行すること、という新たな知見を得られた。 これらの知見は、これまでは主にデータの制約から困難であった世帯属性と所得水準の相違を組み合わせた実証分析を行った結果として新しく得られたものであり、この点が本研究の意義であり、重要性である。
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Remarks |
谷 顕子,「開放経済に立ち向かう農業・食料政策の設計」『アグリバイオ』,1巻9号,2017年,pp. 97-99.
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