2015 Fiscal Year Research-status Report
移住者を含めた若年農村女性の起業・継業を通じたエンパワメントに関する実証的研究
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15K18754
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
澤野 久美 日本大学, 生物資源科学部, 研究員 (10445851)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 若年層農村女性 / 女性農業者 / キャリア形成 / 主体的な選択 / 役割分担 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、家族農業経営における壮年前期世代の女性農業者のライフヒストリー、農業や農業経営に関する知識や経験等の獲得方法、農業経営の展開、経営内部での女性の役割等をみながら、壮年前期世代の女性農業者のキャリア形成プロセスの実態を把握し、その特徴を検討した。 それにより明らかとなったのは、以下の点である。 第一に、女性自身の職業としての農業という主体的な選択およびそれに伴う高い意欲と関心、第二に、経営内部での積極的な役割分担、第三に、経営内部でのパートナーとしての早期からの認知、第四に、市町村レベルあるいは県レベルでの農業者やその支援者となる異業種とのネットワーク構築である。 特に、第一の点については、既往研究で取り上げられてきた高年層世代と大きく異なると考えられる。高年層世代の場合には、農業経営における女性の役割として、経理や加工、販売などを担当することが多く、特に嫁については、農業に対する知識や経験が不足していることや、性別に起因する職業選択の点で農業に接することがほとんどないこと等から、就農当初から農業生産に対するモチベーションを有していたとは考えにくい。しかし、壮年前期世代は個人化の進展などの社会環境の変化もあり、主体的な選択による就農を果たし、職としての農業に対する肯定感が顕著になっていた。 今後は、女性の農業に対する選択的主体的な参画が一層増加していくと考えられる。さらに、農業を取り巻く環境が大きく変化していることからも、農業経営内部での役割分担の明確化が女性農業者のキャリア形成にとってこれまで以上に重要な要素となることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、家族農業経営における壮年前期世代の女性農業者のライフヒストリー、農業経営の展開(特に多角化の状況)、経営内部での女性の役割等をみながら、壮年前期世代の女性農業者のキャリア形成プロセスの実態を把握し、その特徴を検討した。その際、高年層との比較などを念頭において、家族関係や農業との接点を勘案し、若年層農村女性の5類型を示した。今年度の研究実施により、高年層世代の女性との共通点や相違点を析出することができた。この点は、本研究の基礎的な知見として活用することが可能である。 また、フィールドワークが順調に進み、現地との関係も良好で、資料収集等に現時点では問題が生じていないことから、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、今後検討実施する予定の組織レベルでの経営体制に関する分析などをフィールドワークをもとに遂行する予定である。ただし、今後、事例の選定等が難航するおそれがあるが、関連機関への調査協力依頼などを行い、研究遂行に支障がないように努めたい。 また、今年度実施したキャリア形成に関しては、高年層と異なる就農パターンとして注目される、新規就農者や農業法人で就職している女性については十分検討できなかったため、この点も引き続き検討を進めたいと考えている。
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