2016 Fiscal Year Research-status Report
作物根の吸水特性を考慮した水田転換畑における土壌水分移動予測
Project/Area Number |
15K18756
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
加藤 千尋 弘前大学, 農学生命科学部, 助教 (60728616)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 水田転換ダイズ畑 / 土壌水分状態 / 根圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
28年度は,粘性土を用いプラスチックコンテナにダイズを栽培するダイズ畑模型実験を行った.湿田(地下水位10cm),乾田(地下水位40㎝)を想定し生育期間中の根圏の土壌水分変動を連続モニタリングした.実験はガラス室で行い,弘前市の過去の降水量データをもとに降雨を模した散水を行った. 湿田,乾田ともに開花日を過ぎた播種後45日頃から消費水量が急増し,播種後100日頃から消費水量が減少し始めた.乾田では,開花日後深さ20㎝程度までの土壌水分量の平均値が減少したのに対し,湿田は土壌水分量の低下はほとんど見られず,播種後100日を過ぎた頃から,灌漑(降雨)のたびに土壌水分量の平均値が徐々に増加した. 灌漑前後の土壌水分量の鉛直分布を確認すると,湿田,乾田ともに盛夏は地下水位よりも浅い深さにおいて,速やかに,灌漑に伴う増加と蒸発散に伴う減少が生じた.播種後100日を過ぎると,湿田では灌漑と蒸発散に伴う土壌水分量の増減はほとんど見られず,乾田では,蒸発散に伴う土壌水分量の減少速度が盛夏と比較すると低下した. ダイズ収穫後に,深さごとの根量を調査した.湿田では,0~10㎝深におよそ97%の根が集中していた.乾田では,0~10cm深に75%,10~20㎝深に11%,20~30cmに8%,30~40㎝に2%,40~54㎝に3%の割合で分布していた. 以上の実験後,HYDRUS-1Dモデルを用い,生育期間中の土壌水分状態予測の数値計算を試みた.土塊や亀裂などの土壌構造を踏まえて土壌パラメータを決定し,最終的な根量の分布割合をモデルに組み込むと,乾田について,開花日を過ぎたころから播種後100日頃までの土壌水分の変動パターンをよく再現した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
粘性土を用いたダイズ畑模型実験では,湿田・乾田の条件でダイズの生育期間を通して根圏の土壌水分変動や消費水量のデータを得ることができた.ただし,模型内に土を充填した際に表層に比較的大きな土塊が残っており(砕土率が低く),土壌水分動態への土壌構造の寄与が大きかった.29年度に,砂質土とともに,粘性土についても砕土率を高めて再びダイズ畑模型を作製,ダイズ栽培する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
29年度は砂質土と粘性土を用いてダイズを栽培するダイズ畑模型実験を行い,生育期間中の根圏の土壌水分変動を連続モニタリングする.粘性土については特に砕土率に留意する.28年度の模型実験データをもとに,水分状態や生育ステージに応じた根の吸水速度を考慮に入れた土壌水分予測数値計算を進める.
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Causes of Carryover |
見積もりでは実験作業等補助者への謝金を計画していたが,H28年度は補助者を依頼せずに実験を遂行した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越し金は,H29年度の実験のため,故障したセンサ類などの買い足しに充てる.
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Research Products
(2 results)