2015 Fiscal Year Research-status Report
酸素同位体の異常値を指標とした新たな地表水・地下水の起源推定法の開発
Project/Area Number |
15K18760
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
土原 健雄 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門・地域資源工学研究領域, 主任研究員 (30399365)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 酸素安定同位体比 / 降水 / 地表水 / 地下水 |
Outline of Annual Research Achievements |
茨城県内の水田地域において,降水,河川水,地下水,田面水,かんがい用水を対象とし,水素・酸素安定同位体比,酸素安定同位体比異常値として17O-excessの観測を行った.また,山形県,沖縄県において,降水の積算値と考えられる湧水および農業用ため池の水を採取し,同位体比の観測を行った.茨城県の降水の水素・酸素安定同位体比はおおむね対象地の天水線に沿って分布しており,田面水については蒸発の影響による同位体比の上昇が見られた.17O-excess値は降水が最も高く,降水を除く水の17O-excessは降水より低い値を示した.これは,地表水・地下水として流下するまでに発生する蒸発の影響の可能性が考えられた.また,蒸発の影響が最も顕著に現れたのは田面水であり,特に稲の生育初期に17O-excessの低下が見られた.茨城県,沖縄県の観測では,ため池の17O-excessが低下することが示された.降水の17O-excessは夏季に減少し,秋から冬にかけてやや高い値を示す傾向にあり,その変動要因としては,海洋で降水が生成される環境の違い,降水過程における雨滴の再蒸発の影響等が考えられた.一方で,地下水,河川水については一定の経時変動が見られるが,一観測ごとのバラつきが見られており,引き続きの観測が必要といえる.17O-excessの指標としての有効性を確認するためには,温度環境,湿度環境の異なる地域でのデータの蓄積が必要であり,当初予定していた東北の積雪地域,石灰岩帯水層地域に加えて,多数の地域のデータの比較が必要と考えられた.また,関連学会において同位体研究の情報を収集するとともに,得られた研究成果の発表を行った.さらに,研究成果を取りまとめて研究論文として投稿を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデル調査地において,降水,河川水,地下水,田面水,かんがい用水の同位体の観測を行い,地域内の同位体比についてデータの蓄積を行った.また,得られた結果より,比較対象とする地域として,東北の積雪地域,石灰岩帯水層地域以外に,国内の多数の地点でのデータ採取が望ましいことが明らかとなり,それらの地点の選定を開始した.以上より,研究はおおむね計画通りに順調に進捗している.
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Strategy for Future Research Activity |
モデル調査地において,引き続き降水,河川水,地下水,田面水,かんがい用水の同位体の観測を行いデータの蓄積を行うとともに,水素・酸素安定同位体比,17O-excess値の地域や時期による違いを明らかにする.特に多数の地点でのデータ採取においては,その地域の降水の積算値となっている湧水,また蒸発の影響が見られる農業用ため池を対象とした調査を行う.また,得られた成果から,17O-excessを指標として用いるに適した現地・対象の検討を行う.
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Causes of Carryover |
次年度使用額は,複数の地域の試料の分析を一斉に行うなど,研究費を効率的に使用して発生した残額である.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の調査において,当初予定していた地域以外の地域での採水およびそれらの試料の分析消耗品として使用する計画としている.
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Research Products
(3 results)