2015 Fiscal Year Research-status Report
肉用鶏と卵用鶏におけるインスリンシグナル伝達機構の比較
Project/Area Number |
15K18770
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
實安 隆興 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (20721236)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | インスリン / 視床下部 / 骨格筋 / ブロイラー / レイヤー / IRS / Akt / mTOR |
Outline of Annual Research Achievements |
肉用鶏と卵用鶏におけるインスリンシグナル伝達機構の違いを明らかにする目的で本年度は以下の研究を実施した。 1~7週齢の肉用鶏及び卵用鶏の浅胸筋を用いてインスリンシグナル伝達因子の発現量を調べた結果、pAkt/Akt及びpS6のタンパク質量は両鶏種ともに成長に伴い減少した。特に1週齢から2週齢にかけて著しく減少した。また、2週齢において、浅胸筋中のIRS-1のタンパク質量及びpAkt/Aktは卵用鶏に比べて肉用鶏において2倍以上の高い値を示した。次に、孵化後から1週齢までのインスリンシグナル伝達因子の発現量を調べた結果、肉用鶏の浅胸筋においてpAkt/Akt及びpS6のタンパク質量は成長に伴い増加した。したがって、ニワトリ骨格筋におけるインスリンシグナル伝達因子の発現量は両鶏種ともに成長に伴い変化するものの、卵用鶏に比べて肉用鶏において高い可能性が示された。 2週齢の肉用鶏及び卵用鶏において、2~4時間の絶食により血中インスリン濃度、浅胸筋のpAkt/Akt及びpS6のタンパク質量は両鶏種ともに有意に減少した。また、1週齢の卵用鶏の視床下部においても、2時間の絶食によりpAkt/Akt及びpS6のタンパク質量は有意に減少した。したがって、比較的短時間の絶食条件下において、血中インスリン濃度の生理的変化に応じてニワトリの骨格筋及び視床下部のインスリンシグナル伝達経路は調節され得ることが示された。 3時間絶食した1週齢の卵用鶏にインスリンを脳室内投与した結果、視床下部のpAkt/Akt及びpS6のタンパク質量は生理食塩水投与群に比べて有意に増加した。しかしながら、インスリンの脳室内投与による摂食抑制効果は、ラパマイシンの共投与により緩和されなかった。したがって、哺乳動物とは異なり、ニワトリにおいてはインスリンの摂食抑制作用に視床下部のmTORは関与していない可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初の計画通り、両鶏種の骨格筋におけるインスリンシグナル伝達因子の発現量を週齢間、自由摂食及び絶食条件下で比較した。しかし、申請時には予定されていなかった動物飼育舎の耐震補強改修工事が本年度行われ、飼育期間やスペースが制限されたために計画していた研究の一部を完了できなかった。その代り、次年度に予定していた研究のうち、工事により制限されたスペースでも実施可能な脳室内投与による検討を前倒しで行った。したがって、全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予想に反し、ニワトリにおいてはインスリンの摂食抑制作用に視床下部のAkt/mTOR経路は関与していない可能性が示された。したがって、まずはニワトリ視床下部においてインスリンの摂食抑制作用に関与するシグナル伝達経路を卵用鶏を用いて明らかにする。その後、そのシグナル伝達因子の発現量について、成長に伴う変化や絶食・再給餌による変化を調べると共に、肉用鶏との比較検討を行う。 その他については、2015年度に計画していたものの完了しなかった研究を実施すること以外は当初の計画通りに進める。
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