2017 Fiscal Year Research-status Report
ザンビアにおける潜在的病原ウイルスに関する調査研究
Project/Area Number |
15K18778
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
梶原 将大 北海道大学, 人獣共通感染症リサーチセンター, 博士研究員 (70711894)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 人獣共通感染症 / フレボウイルス / エボラウイルス / ダニ媒介性ウイルス / ザンビア / クリミア・コンゴ出血熱 / コウモリ / マールブルグウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はザンビアにおいてコウモリおよびマダニ等が保有するウイルスを検出し、病原体としての潜在的リスクを評価することを目的とする。研究計画およびこれまでの研究結果に基づき本年度は以下の研究を実施した。 これまでに検出されたダニ媒介性フレボウイルス (TBPV) の遺伝子を分子系統解析した結果、ザンビアには少なくとも9クレードのTBPVが存在することがわかった。過去、ヒトに熱性疾患を引き起こしたことのあるBhanjaウイルスと同じクレードに属するTBPVも検出され、本ウイルスがヒトや動物に対して病原性を有する可能性が示唆された。 また、昨年度検出されたクリミア・コンゴ出血熱ウイルス (CCHFV) を分子系統解析したところ、S分節はアフリカに分布するウイルスと非常に近縁な一方で、M分節はアジア由来のウイルスと同じクレードに属することがわかった。CCHFV遺伝子を保有するマダニは同国内の広い地域で採取されており、CCHFVがかなり古くからザンビアのマダニで維持されていることが示唆された。また、ヒトの血清検体からCCHFV特異抗体が検出されており、ザンビアにおいて散発的かつ孤発的にCCHFVのヒトへの感染が発生していることが示唆された。 ザンビア国内の洞窟に生息しているエジプトルーセットオオコウモリを対象にフィロウイルスの疫学調査を実施した。フィロウイルス遺伝子はいずれの個体からも検出されなかったが、フィロウイルス特異抗体を有する個体が存在することがわかった。特に、マールブルグウイルスに対する抗体保有率は43.8%にも上った。過去3年に渡る調査の結果、11、12月に抗体保有率が周期的にピークを迎えることがわかった。また、体重の大きな個体ほど抗体保有率が高かった。以上の結果から、調査対象のコウモリ群内においてマールブルグウイルスが継続的に維持されており、周期的に活発なウイルス伝播が起きていることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を通して、遺伝的に非常に多様なTBPVがザンビアに存在することが明らかになった。その中には潜在的に病原性を有する可能性のあるウイルスも含まれていた。また、フィロウイルスの研究においては血清学的なアプローチによりマールブルグウイルスを保有する可能性が強く示唆されるコウモリ群を特定するに至った。計画書に記載した上記の研究以外にも、CCHFVの検出、コウモリムンプスウイルス (MuV-Bat) の分離など、当初の計画を上回る学術的成果を上げることができた。 その一方で、 TBPVの分離およびフィロウイルス遺伝子の検出については未だ達成できていない。また、ザンビア国内の特定のエジプトルーセットオオコウモリ群においてマールブルグウイルス特異的抗体の保有率に周期的パターンが確認された。この発見をより確実に証明するために、もう1年同一コウモリ群をモニタリングする必要があり、研究期間の延長を申し出た。 以上の状況を包括的に鑑みて、「おおむね順調に進展している。」と評価するのが妥当であると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
ザンビアで発見されたTBPVの生物学的性状をより詳細に理解するためには、ウイルス分離およびウイルスの全ゲノムシークエンスを実施する必要がある。特に病原性が示唆されたウイルスについては、分離ウイルスを用いてモデル動物に対する感染実験を実施したい。 フィロウイルスを対象にした研究については、上記のように現在調査中のコウモリ群を対象とした疫学研究を継続する。同コウモリ群における抗体保有率の推移を継時的に観察すると同時に、そこから得られた情報に基づきマールブルグウイルスの伝播がコウモリ群内において最も活発と思われる時期に採材を実施し、コウモリからのフィロウイルス遺伝子の検出およびウイルス分離を目指す。また、ヒト血清検体を用いたフィロウイルス感染症に対する血清疫学調査も併せて実施したい。 CCHFVについては、SおよびM遺伝子分節の一部の塩基配列がわかっているが、L遺伝子分節については未だ検出されていない。また、イボマダニ以外のマダニについてはCCHFV遺伝子のスクリーニングを実施していない。ザンビアで採集したイボマダニ以外の検体をスクリーニングし、検出されたウイルスの全ゲノムを決定することで、ザンビアにおけるCCHFVの宿主域、分布域、遺伝的多様性を明らかにしたい。 MuV-Batについては齧歯類のモデル動物に対する感染実験により詳細な感染動態の理解に努める。具体的には、実験動物の各臓器におけるウイルス増殖および組織学的な病変を継時的に観察し、MuV-Batの宿主特異性、組織指向性および潜在的病原性を評価すると共に、ムンプスウイルスの代替ウイルスとしての有用性について検討したい。
|
Causes of Carryover |
本課題と並行して実施している他プロジェクトの業務のために、研究代表者はザンビアを拠点に研究活動を実施していた。本研究のために採取した検体は並行プロジェクトと共有しており、本課題で必要経費として計上していた旅費やザンビア国内での採材経費を支出する必要がなかった。また、コウモリを対象とした血清疫学の研究成果を受けて、来年度もコウモリを対象とした調査を継続する必要が生じた。そこで、来年度の研究活動に必要な資金を計画的に確保した。 次年度はザンビアでのコウモリの採材に必要な経費を計上している。また、得られたデータを発表するために学会参加費および論文投稿料などに使用したい。
|
Research Products
(19 results)
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] Surveillance of Viral Zoonoses in Africa2017
Author(s)
Takada A、Kajihara M、Mori A、Yoshida R、Miyamoto H、Igarashi M、Sawa H、Orba Y、Nakamura I、Isoda N、Ishii A、Ito K、Arikawa J、Yoshimatsu K、Ogawa H、Simulundu E、Changula K、Saasa N、Muleya W、Yabe J、Munyeme M、Hang'ombe B、Simuunza M、Choongo K、Mweene A
Organizer
The 2nd International Joint Symposium: Promotion of Infectious Disease Research Cooperation between Africa and Japan toward Science, Technology and Innovation
Int'l Joint Research / Invited
-