2015 Fiscal Year Research-status Report
非霊長類ヘパシウイルスの遺伝的多様性と宿主特異性の解明
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15K18779
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
田中 智久 山梨大学, 総合研究部, 助教 (30585310)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ウイルス / 疫学 / 翻訳開始 / C型肝炎ウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
1.非霊長類ヘパシウイルス(NPHV)感染動物の疫学調査 日本在来馬の1種である対州馬を対象とした疫学調査を行った。長崎県対馬市において飼養されている対州馬30頭から血清を採取した。ウェスタンブロット法により、NPHVコア蛋白質を過剰発現させた培養細胞ライセートと対州馬血清の反応性を調べ、血清中の抗NPHV抗体の有無を判定した。また、血清からRNAを抽出し、NPHVゲノムRNAの有無をRT-PCR法により判定した。その結果、30頭中6頭が血清抗NPHV抗体陽性、3頭がNPHVゲノム陽性となった。対州馬より分離されたNPHVゲノム断片の塩基配列は現在解析中である。対州馬は、血統保存の観点から閉鎖的な環境で長期間飼養されており、同馬コロニー内でNPHVが長年にわたり維持されている可能性が考えられる。また、日本在来馬は、朝鮮半島経由で入ってきたモンゴル馬が由来と考えられているので、日本在来馬のルーツを遡ることでNPHV進化の過程を解析することができると考えられる。
2.IRES依存性翻訳開始機構の解析 NPHVおよびC型肝炎ウイルス(HCV)由来のIRES配列を有するレポータープラスミドを作製し、各ウイルスのIRES活性を評価できる実験系を構築した。また、IRES配列のドメイン構造の欠損変異体を作製し、NPHVのIRES配列において必須となる領域を同定した。これらの結果、両ウイルスの5' 非翻訳領域は、二次構造のみでなく、翻訳開始における機能を共有していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画で予定した通り、日本在来馬より血清採取を行い、非霊長類ヘパシウイルスの疫学調査を実施した。概ね予定通りの疫学調査を終了することができたといえる。対州馬血清から分離されたウイルス遺伝子の塩基配列は現在解析中だが、次年度以降の計画に支障を与えない程度の作業量で達成可能と考えている。 また、本年度実施項目として計画していた、NPHV IRESの機能解析についても順調に解析が進んだ。NPHV IRES配列を有するレポータープラスミドは、期待されたIRES機能を示し、この実験系を用いてIRES活性の機能解析を進めることができた。次年度以降は、同様のレポーターシステムを用い、さらに詳細な解析を進めたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.NPHVのIRES依存性翻訳開始機構の解析 NPHVのIRES依存性翻訳開始機構を詳細に解析するため、これまでに確立したNPHV IRES依存性翻訳を評価するレポーターアッセイの実験系と、キャップ依存性翻訳を阻害する化合物を使用し、IRES依存性翻訳に必要な宿主因子を明らかにする。HCVとNPHVの翻訳開始機構を詳細に比較解析することで、ヘパシウイルス属ウイルスにおける共通の機能や、宿主特異性を規定する要因が明らかになると考えられる。
2.NPHV シュードタイプウイルスの作製と、ヒト培養細胞への感染性の評価 NPHVエンベロープ蛋白質を被覆したシュードタイプウイルスは、NPHV固有のエントリー機構により宿主細胞に侵入するが、感染細胞内でウイルス産生は行わないことが予想される。HCVシュードタイプウイルスの作製方法を応用し、NPHVシュードタイプウイルスを作製するとともに、NPHVシュードタイプウイルスのヒト培養細胞への感染の有無を調査する。本研究結果により、NPHVの人への感染リスクを評価することができると考えられる。
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