2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K18809
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
平垣 進 神戸大学, 学内共同利用施設等, その他 (40600424)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | メラトニン受容体 / 概日リズム / 光周性 / 行動多型 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在まで無脊椎動物において機能的なメラトニン受容体の存在に関する確たる証拠はない。申請者は昆虫において合成酵素が概日振動体と光周性の出力因子を仲介する結節点であることを示した。このことは昆虫でメラトニン受容体を介した生理調節機能の存在を強く示唆する。加えて応募者の発表及び未発表データはメラトニンが概日リズム及び行動多型の制御機能を担っている可能性を示唆する。応募課題では機能的な昆虫メラトニン受容体の存在の証明、機能解析及び生理機能の調節様式を解明する。これらは生物学的な新規性のみならず、昆虫の光周性に対する理解を介して地球温暖化により急速に分布域を広めている衛生害虫に対する対策にもつながる可能性を秘めている。 メラトニンが概日リズムに与える影響を調べるためにワモンゴキブリを用いてメラトニンの経口投与実験を行った。その結果コントロールの水投与群と比較して有意にその行動リズムの変化が確認され、リズムのノイズが減少することが確認された。ワモンゴキブリは夜行性の昆虫であるが、水投与群と比べてメラトニン投与群では昼間の行動が有意に減少し、夜間の行動活性が上昇することが確認された。引き続いてメラトニン受容体のRNAiを誘導し、行動リズムを測定したところ、メラトニンの経口投与とは逆に、行動リズムのノイズが上昇し、リズムを消失する個体が上昇した。メラトニンの合成酵素のaaNATに対してRNAiを行うと、メラトニン受容体のRNAiと同じようにリズムのノイズが上昇することが確認された。さらにaaNATの誘導個体にメラトニンを経口投与するとノイズの消失から回復することが認められた。免疫組織学的解析によりメラトニン受容体、aaNAT陽性反応はともに時計細胞及び左右に存在する時計を連結している神経線維に認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
メラトニンが概日リズムに与える影響については順調に進んでおり、現在投稿準備中の論文の査読にあわせて追加実験を行う予定であるが2016年度に行う予定の実験はほとんどない。 しかしながら、サクサンを用いた季節適応における役割については2015年度に実験材料の手配の不備によりやや遅れており、メラトニン受容体の分子クローニングがいまだに成功していない。加えて、今年度からミツバチの行動多形に対するメラトニン受容体の役割ついて解析する予定であったが、巣箱を設置していた箇所での改修工事に合わせて2016年1月からキャンパス内から巣箱を移動することになった。改修工事終了時にあわせて改めて巣箱の設置申請を行ったが現在の所、安全上の理由により今年度は却下されてしまった。このためメラトニンの季節適応と行動多形に関する研究はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
サクサンについて、今年は夏ごろから手配について密に連絡をやり取り、確実にサンプルを手配する。ミツバチに関しては大学での飼育に関しての申請を継続させるとともに、現在コロニーを維持している神戸市北区でRNAiの誘導やサンプリングが行うことができるように再計画をする予定である。組換え動物細胞にメラトニンを投与する実験に関しては、メラトニンが受容体に結合しないか、受容体が哺乳類細胞のエフェクターに作用しないか、あるいはカルシウム以外の系に作用しているかが今のところ不明であるために問題を解決する手段が不明である。 ミツバチについてはaaNATにRNAiを誘導し、外勤化の阻害が起こるか検証をする。また、メラトニンの注射とメラトニン受容体のRNAi誘導を同時に行い、メラトニンの注射による外勤の誘導がメラトニンを介して行われているかの検証をする。PERのRNAiを行い、中枢神経系でのMELの蓄積が外勤を誘導するかの検証を行う。メラトニン受容体と生物時計因子、aaNATを免疫組織染色にて染色し、これらの位置関係がどのようになっているかの検証を行う。 サクサンについてはメラトニン受容体の分子クローニングを行い、メラトニン受容体にRNAiを誘導し、休眠覚醒条件におくことで休眠覚醒が阻害されるかの検証を行う。
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Causes of Carryover |
ミツバチを用いた実験の予備実験を遂行することができなかったことが主な理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ミツバチについて飼育体制か、現在飼育している北区での研究体制を早急に建て直し、春先の予備実験ができなかった部分の遅れを取り戻して使用する予定である。
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Research Products
(2 results)