2015 Fiscal Year Research-status Report
カイコの内分泌系を制御する新規尿酸関連遺伝子の研究
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15K18810
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤井 告 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 研究員 (50507887)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 尿酸 / XDH / XO / 卵形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
新規変異体であるカイコの無卵油(oel)は、発育の遅延、脱皮回数の増加、造卵の欠如に加えて、尿酸の不在が原因で皮膚が透明化する。尿酸関連遺伝子であるoelは、幼虫の成長と蛹期の卵形成を支配する内分泌系で想定外の機能を有していると考えられ、内分泌系を制御する分子機構を解明する上で格好の研究対象である。そこで本研究では、無卵油の原因遺伝子を特定し、その機能を生理・遺伝学的に解明することを目指す。 初年度には、無卵油の皮膚が透明化するメカニズムを解析した。幼虫の皮膚が透明化する変異体である油蚕は、体内で尿酸を合成できないタイプと、合成された尿酸を皮膚に蓄積できないタイプの二つに大別される。尿酸はキサンチン脱水素酵素(XDH)の働きによってキサンチンやヒポキサンチンから合成される。無卵油がどちらのタイプの油蚕であるのか明らかにするために、XDHと同様の機能を有するキサンチン酸化酵素(ウシ由来)を無卵油に注射したところ、注射3日後には皮膚が不透明化すると同時に、正常幼虫と同程度の量の尿酸が皮膚に蓄積されることが判明した。この結果から、無卵油はXDH活性に異常があるために尿酸を合成できないことが明らかとなった。 XDHの活性に異常を有する油蚕としてはoq油とog油が知られている。oq遺伝子はXDHをコードし、og遺伝子はXDHの機能に必須であるモリブデン補酵素の合成酵素をコードする。oq油とog油の雌には造卵の異常が認められることから、無卵油に認められる造卵の異常はXDH活性の不在に起因することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規突然変異体である無卵油は、XDHの機能不全が原因で尿酸を合成できないことが明らかになった。この知見は、無卵油に認められる造卵の異常、発育の遅延、脱皮回数の増加といった形質異常が発現するメカニズムを解明する上で重要な手がかりとなる。
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Strategy for Future Research Activity |
oel遺伝子はXDHの機能を制御する機能を有することが判明した。今後は、oel遺伝子がどのようなメカニズムでXDHの機能を制御しているのか明らかにすることを目標とする。XDHが正常な機能を有するにはモリブデン補酵素が必要である。そこで、oel遺伝子がモリブデン補酵素の合成を支配しているのかどうか検証する。それと同時に次世代シーケンス解析等によって原因遺伝子の特定を進める。
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Causes of Carryover |
無卵油が尿酸を合成できないのか、合成された尿酸を蓄積できないのかという点を明らかにするには、移植実験やモザイク解析といった複雑な実験が必要であることを想定していた。一方、新たに考案したウシ由来キサンチン酸化酵素を利用した実験によって、無卵油がキサンチン脱水素酵素(XDH)の機能に異常を有しいること、尿酸を合成できないタイプの油蚕であることをいち早く突き止めることができた。これにより、経費が大幅に削減された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
無卵油系統のゲノムの次世代シーケンス解析を行って原因遺伝子の特定を試みる。有力な原因遺伝子候補に対してCRISPR-Cas9システムを利用してノックアウトを試みる。
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Research Products
(3 results)