2016 Fiscal Year Research-status Report
カイコの内分泌系を制御する新規尿酸関連遺伝子の研究
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15K18810
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤井 告 九州大学, 農学研究院, 学術研究員 (50507887)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 尿酸 / XDH / XO / 卵形成 / モザイク解析 / 次世代シーケンス / 真皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
カイコの新規突然変異である無卵油(oel)は、発育の遅延、脱皮回数の増加、造卵の欠如に加えて、尿酸の不在が原因で皮膚が透明化する。尿酸関連遺伝子であるoelは、幼虫の成長と蛹期の卵形成を支配する内分泌系で想定外の機能を有していると考えられ、内分泌系を制御する分子機構を解明する上で格好の研究対象である。 平成27年年度には無卵油の皮膚が透明化するメカニズムを解析し、無卵油では尿酸合成に必須であるキサンチン脱水素酵素(XDH)の活性が失われていることを明らかにした。XDH活性の欠失に起因する油蚕は既に知られているが、それらでは共通して造卵の異常が認められることから、無卵油の造卵異常もXDH活性の欠失に起因することが示唆された。 平成28年度には無卵油においてXDH活性が失われるメカニズムの解明を試みた。①IonProton次世代シーケンサーを用いて無卵油ゲノムのシーケンスを行った結果、平均163bpの配列が約7千万配列得られ、96%の配列が参照配列にマッピングされた。すでにoel座はZ染色体上の222 kbの領域に絞り込まれているので、当該領域に存在が予測されている遺伝子のORFに挿入や欠失を生じさせる変異の有無を探索したが、そのような変異は同定されなった。②突然変異moを活用したモザイク解析の結果、透明な皮膚と不透明な皮膚が1個体に共存する無卵油のモザイク幼虫が得られた。一方、真皮におけるRT-PCR解析の結果、無卵油でもXDH遺伝子の発現が認められた。この結果から、oel遺伝子は真皮細胞で発現するXDHが正常な活性を有する上で細胞自律的に機能していることが示唆された。従来、尿酸は脂肪体で合成され、体液を経由して真皮細胞に運搬・蓄積されると考えられていた。今回得られた結果から、カイコの真皮細胞においても尿酸が合成されていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
無卵油系統において次世代シーケンサーを利用した全ゲノム解析を完了した。この情報は、次年度以降に原因遺伝子を特定する上で有用である。
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Strategy for Future Research Activity |
原因遺伝子の存在領域をさらに絞り込むためにマッピングを進める。絞り込まれた領域の情報と、全ゲノム解析で得られた配列情報を組み合わせて、原因遺伝子の特定を目指す。
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Causes of Carryover |
次世代シーケンス解析を安価に行うことができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
シーケンス解析の受託や、消耗品の購入に使用する。
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Research Products
(3 results)