2017 Fiscal Year Research-status Report
カイコの内分泌系を制御する新規尿酸関連遺伝子の研究
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15K18810
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤井 告 九州大学, 農学研究院, 特任助教 (50507887)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | CRISPR/Cas9 / ゲノム編集 / 尿酸顆粒 |
Outline of Annual Research Achievements |
カイコの新規突然変異である無卵油(oel)は、発育の遅延、脱皮回数の増加、造卵の欠如に加えて、尿酸の不在が原因で皮膚が透明 化する。尿酸関連遺伝子であるoelは、幼虫の成長と蛹期の卵形成を支配する内分泌系で想定外の機能を有していると考えられ、内分 泌系を制御する分子機構を解明する上で格好の研究対象である。 平成27年年度には無卵油の皮膚が透明化するメカニズムを解析し、無卵油では尿酸合成に必須であるキサンチン脱水素酵素(XDH)の活性が失われていることを明らかにした。XDH活性の欠失に起因する油蚕は既に知られているが、それらでは共通して造卵の異常が認められることから、無卵油の造卵異常もXDH活性の欠失に起因することが示唆された。 平成28年度には無卵油においてXDH活性が失われるメカニズムの解明を試みた。突然変異moを活用したモザイク解析の結果、透明な皮膚と不透明な皮膚が1個体に共存する無卵油のモザイク幼虫が得られた。一方、真皮におけるRT-PCR解析の結果、無卵油でもXDH遺伝子の発現が認められた。この結果から、oel遺伝子は真皮細胞で発現するXDHが正常な活性を有する上で細胞自律的に機能していることが示唆された。 平成29年度には、CRISPR/Cas9を利用してoel原因遺伝子候補の機能を解析する体制を整備した。チョウ類で開発された方法に従い、市販のCas9タンパク質とターゲット遺伝子(BmHPS5)に設計したsgRNA2種を混合して非休眠系統p55の産下直後卵に注射を行い、孵化個体の表現型を調査した。BmHPS5遺伝子は真皮細胞で尿酸顆粒の蓄積を制御する遺伝子であるため、ノックアウトが成功した場合には、皮膚が透明化した幼虫が出現することが予想される。調査の結果、128頭中127頭の幼虫において、皮膚の完全な透明化や、モザイク形質が認められ、本方法のノックアウト効率は非常に高いことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までにoel遺伝子の機能を形質遺伝学的・分子遺伝学的に明らかにすることができた。また次世代シーケンス解析によって、無卵油系統のゲノムのリシーケンスを行った。ゲノム情報は、無卵油(oel)の原因遺伝子を特定する上で基盤となる。本年度は、CRISPR/Cas9を利用したゲノム編集により非常に高い効率でターゲット配列をノックアウトする体制を整備することができた。これにより、次年度にはCRISPR/Cas9により原因遺伝子候補の機能解析が可能となる。
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Strategy for Future Research Activity |
無卵油(oel)の原因遺伝子候補の機能をゲノム編集で解析し、原因遺伝子の特定を目指す。
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Causes of Carryover |
理由 CRISPR/Cas9を利用したゲノム編集の実験を予想よりも安価に効率的に行うことができた。 使用計画 最終年度には、oel候補遺伝子の機能解析のため、CRISPR/Cas9を利用したゲノム編集の実験を大規模に展開する予定であるので、研究費が必要である。
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