2015 Fiscal Year Research-status Report
海浜植生の生物多様性保全に向けた絶滅危惧植物数種における発芽・定着機構の解明
Project/Area Number |
15K18817
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
黒田 有寿茂 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 講師 (30433329)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 海浜植生 / 生物多様性保全 / 絶滅危惧植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、海浜生の絶滅危惧植物数種における発芽・定着機構を明らかにし、その効果的な域内保全・域外保全の方法を提言することである。この目的を達成するために、本研究では各種の発芽試験・野外調査を行う。平成27年度は、(1)フェノロジーの調査、(2)種子の採集、(3)種子の休眠・発芽特性に関する試験、(4)海流散布能力に関する試験、(5)埋土種子形成能力に関する試験の準備、(6)種子の保存可能性に関する試験の準備、を行った。 (1)は京都府京丹後市の数カ所の砂質海岸で行った。月2-4回の頻度で海浜植物各種の生育状態(開葉、開花、結実、種子散布など)を観察し、記録した。この調査により絶滅危惧植物数種を含む海浜植物約30種の基本的なフェノロジー特性をおおむね把握した。(2)は(1)と合わせて行った。採集した種子は実験室に持ち帰り保管した。(3)は絶滅危惧植物であるイソスミレを対象に行った。各種の発芽試験により、一次休眠の有無、休眠種子における休眠打破の要件、非休眠種子の発芽可能温度域、変温要求性、光要求性など、本種の基本的な休眠・発芽特性を把握した。(4)は絶滅危惧植物数種(イソスミレ、ウンラン、ハマベノギク、ナミキソウ、ハイネズ、ハマナス)を対象に行った。海流散布能力を調べるために、種子の人工海水に対する浮遊能力を調べた後、無処理のものと合わせ、播種試験を行った。播種試験は現在継続中である。(5)(6)はイソスミレを対象に行った。(5)では採集した種子をメッシュ袋に入れ、京丹後市の砂質海岸において埋土処理を行った。(6)では採集した種子にいくつかの保存条件(複数の温度条件および容器タイプ)を設定し、保管した。(5)(6)については平成28年以降に発芽試験を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主な調査・解析対象である海浜生の絶滅危惧植物については、種子の採集や発芽試験をおおむね当初の計画通り進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度以降は、平成27年度に開始した海流散布能力に関する試験を引き続き行うほか、準備を進めた埋土種子形成能力に関する試験、種子の保存可能性に関する試験を開始する。一部の海浜植物についてフェノロジー調査や種子の採集が不足しているので、これも合わせて行う。またイソスミレなど重要な絶滅危惧植物を対象に、発芽・初期成長における堆砂耐性を調べる試験も行う。このほかイソスミレについては主要な分布地において生育環境を把握するための野外調査も行う予定である。絶滅危惧植物のほか、海浜生の普通種、内陸植物、外来植物などに関する発芽試験も検討しているが、これらについては上述の試験・調査の進捗に応じ、実施の規模を決定する。進捗に遅れが生じた場合には、試験対象とする種を減らす、野外調査の地点数を減らすなどし、研究期間内に一定の成果が上げられるよう図る。
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Causes of Carryover |
平成27年度に予定していた調査のうち、海浜生の普通種のほか、内陸植物、外来種などに関する発芽試験を進めることができす、このことにより次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海浜生の絶滅危惧植物に関する試験・調査を最優先とするが、海浜生の普通種、内陸植物、外来種などについても対象種を絞り、可能な範囲で発芽・播種試験を行い、予算を執行する。
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