2017 Fiscal Year Research-status Report
モンゴルの地域制国立公園の協働的管理と社会生態的効果:砂漠化対策への応用に向けて
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15K18818
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮坂 隆文 名古屋大学, 環境学研究科, 助教 (80635483)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ガバナンス / 乾燥地 / 協働型管理 / 土地荒廃 / 菜種 / 放牧地 / 牧民 / 保護地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
モンゴルのフスタイ国立公園及びその周辺地域を対象とし、拡大傾向にある作物生産の持続性について継続調査すると共に、公園設置前から現在までの公園内外の植生変動を、公園がまたがる3つの行政区(ソム)の外も含め、管理レベルの異なるゾーンごとに時系列衛星画像を用いて解析した。 コムギ畑、ナタネ畑、及びそれぞれの耕作地と隣接する草地(対照区)において、土壌調査を実施した。その結果、コムギ畑では2016年の休閑により土壌水分量が増加し、栽培を再開した2017年でも隣接草地より高い状態が維持されていた。一方、ナタネ畑では同じく2016年に休閑したものの、その後も土壌水分量の低下傾向が確認された。昨年度報告した通り、この地域では作物生産を続ける上で休閑の効果が重要であるため、コムギに比べナタネ栽培の持続性は低い可能性があり、継続的なモニタリングが必要と考えられた。 衛星画像解析では、公園内をコアゾーン、公園が牧民と協働管理を行っているバッファーゾーン、バッファーゾーン外で3つの行政区内であるソムゾーン(優先順位は落ちるが公園管理の対象内)、上記行政区外のアウターゾーン(公園管理の対象外)という4つのゾーンを設定した。結果として、ゾーン間で植生の変動傾向に顕著な差は見られなかった。コアゾーン内の植生量は比較的高かったものの、公園設置前から同じ傾向が続いていた。フスタイ国立公園はその比較的良好な自然環境状態により、絶滅したモウコノウマの再導入地として選定された場所であるため、コアゾーン内外の植生量の差は公園の管理効果によるものではなく、もともとの状態を反映していると考えられた。一方、コアゾーン以外のゾーン間でも植生量の差に変化が見られなかったことから、昨年度報告した通りまだ協働型管理の影響が局所的であり、ゾーンごとの平均値で検出できるほど広域に及んでいない可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
公園がまたがる三つの行政区の社会経済状況の変化について、公園管理主体であるNGOや関連団体が過去に作成した資料(モンゴル語)を複数入手し、現地の研究協力者に翻訳を依頼していたが、想定以上に時間がかかっており、まだ完了していない。文献の分析およびフォローアップのための調査を行うため、補助事業期間の延長を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られたデータの整理・分析・考察を進めると共に、上述した資料分析および現地調査を行い、最終的な管理の総合評価を行う。
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Causes of Carryover |
(理由) 現地の研究協力者に依頼したモンゴル語の文献の翻訳が、想定以上に時間がかかり年度内に完了せず、その支払いを行うことができなかったため。 (使用計画) 翻訳が完了次第、その支払いに充てる。
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Research Products
(2 results)