2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K18837
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
山本 大介 北里大学, 薬学部, 助教 (10509970)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 酸化反応 / マンガン錯体 / ジヒドロイソオキサゾール環 / 不斉反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
空気中の酸素分子を常温常圧で酸化剤として利用する酸化反応は、経済的に優れた環境調和型の有機合成反応である。これまでにも金属触媒存在下、酸素を酸化剤として用いる反応例が数多く報告されており、近年では、ニトロキシルラジカルと金属を用いることによって、アルコールの酸化反応が実現されている。生体内においてはシトクローム系酸化酵素やキサンチンオキシダーゼなど、常温常圧で酸素分子を直接利用し、基質に酸素分子を固定化する酵素が存在しているものの、酸素分子を反応基質に直接取り込む反応例は少ない。そこで、酸素親和性の高い遷移金属錯体を用いることによって、空気中の酸素分子のみを選択的に活性化し、続けて、基質と反応し酸素分子を基質へ固定化することが可能となれば、空気中の酸素分子を酸素源として利用した有機化学反応が開発できると考えた。 様々な官能基の中からその水素-酸素結合の結合解離エネルギーが比較的低いと報告されているオキシムを用い、酸素分子に含まれる存在的な酸化能力を効率的に活性化できる金属錯体を探索したところ、マンガン錯体は他の金属錯体に比べ高い活性化能を有していることを確認することができた。そこで、基質としてβ,γ-不飽和オキシムを用い、マンガン錯体による酸素分子固定化反応を検討したところ、効率良くジヒドロイソオキサゾール環へと導くことが可能であった。さらに、空気中の酸素分子由来である、過酸化物を得ることにも成功した。我々が見いだした反応条件は、広い基質一般性を有しており、様々な基質に対しても適用可能であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始当初、オキシムに対し様々な金属錯体を適用させたところ、予期せぬ副反応が進行し、目的とする空気中の酸素分子を基質へと固定化することは困難であった。そこで、生体内に存在する酵素を足掛かりに、マンガン錯体に着目し検討を行ったところ、分子変換を伴った酸素分子の固定化が可能であることを見いだすことができた。また、用いたマンガン錯体の触媒量についてさらに検討を重ねたところ、0.1 mol%(基質に対し1000分の1当量)用いるのみで、酸素分子を固定化できることが可能であった。我々が見いだした反応条件は報告されている同様の反応条件(10.0 - 1.0 mol%)に比べ高活性であり、芳香族オキシムのみならず脂肪族オキシムに対しても適用可能であったことから、天然物合成を含め、ファインケミカルの合成に適用できると期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
我々が行ってきた検討結果よりマンガン錯体は空気中の酸素分子を効率的に基質に固定化できるという特筆すべき結果を示すことができた。現在のところ、我々はマンガン錯体による酸素分子の活性化には、オキシムの水素-酸素結合の均等開裂によって生じるオキシムラジカルの生成が駆動力となっていると考えている。そこで、①オキシム以外のヒドロキシアミン構造でも同様に活性化できるか否かを確認する。また、現時点では分子内環化反応であることから、②分子間においても同様の酸素分子固定化反応が進行するか否かを確認する。以上①、②の結果を参考に、ファインケミカルの合成を目指し、③ジアステレオ選択的反応、さらには④不斉反応の開発に向け検討を開始する予定である。 ③ジアステレオ選択的反応を指向した場合、適した立体配座を有する基質を調製する必要がある。そこで、天然物合成をも視野に入れ、キラルな反応基質の合成を予定している。また、④不斉反応の開発を指向し、その端緒として、様々な配位子存在下での酸素分子固定化反応の検討を行う。
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