2015 Fiscal Year Research-status Report
論理的高分子設計によるデュアルpH応答型ドラッグデリバリーキャリアの創製
Project/Area Number |
15K18846
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
蛭田 勇樹 慶應義塾大学, 薬学部, 助教 (60710944)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | pH応答性ポリマー / ブロックコポリマー / ミセル / ドラッグデリバリーシステム / がん / ドキソルビシン / ナノ |
Outline of Annual Research Achievements |
ドラッグデリバリーシステムは、長時間にわたって薬剤を治療有効濃度に保つことや、副作用を低減させる技術であり、体内での薬の徐放、病態組織への局所的輸送を制御するシステムである。本研究においては、がん組織周辺の弱酸性pH、細胞内小胞の特徴的pHに注目した2段階pH応答性ブロックポリマーを設計し、がん細胞選択的な取り込み、および細胞取り込み後の薬物放出が可能なドラッグキャリアの創製を目的とした。まず、弱酸性環境になった時のみ細胞に取り込まれるpH応答性ポリマーミセルを創製した。疎水性ブロックとして、poly(butyl methacrylate)、pH応答性水溶性ブロックとしてN-isopropylacrylamide、N,N-dimethyl acrylamide、pH認識部位であるsulfamethazineacrylamideを共重合したpH応答性ブロックコポリマーを合成した。このポリマーを用いて、抗がん剤としてドキソルビシンを内包させミセル化した。培養する培地pHによるHeLa細胞へのドキソルビシンの取り込み量について蛍光顕微鏡により評価した。pH 7.4では、細胞取り込み量は少なく、pH 6.4では取り込み量が増加した。これらの結果から、弱酸性環境のがん細胞選択的に薬物を送達できるようになることが期待される。 細胞実験に加えて、動物実験での評価系を確立するために、BALB/c-nuマウスにcolon-26細胞を皮内注射することで担癌モデルマウスを作製した。HPLCを用いて、作製したドラッグキャリアの各臓器への集積の評価系を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、細胞実験による評価までの予定であったが、1年目からpH応答性ポリマーミセルの細胞取り込み能まで評価することができたため、動物実験での評価系の立ち上げまですることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
pH応答性ポリマーミセルの作製法および、蛍光顕微鏡による細胞取り込み評価までできたので、フローサイトメトリー、MTTアッセイにより、さらに細胞系での評価を行う。また、今年度確立した担癌モデルマウスにおいてpH応答性ポリマーミセルの評価を行う。得られた成果は精力的に学術論文や学会にて発表していく予定である。
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Causes of Carryover |
pH応答性ブロックポリマーの合成が、最適化などせずに、すぐに合成できたので、合成試薬、溶媒などに使う予定であった予算が必要なくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定では、細胞実験までの予定であったが、予想以上に研究が進展しているため動物実験も行う。そのため、実験動物の購入費用に次年度使用額をあてる。
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