2015 Fiscal Year Research-status Report
磁場を利用したM2型マクロファージの選択的送達に基づく炎症性腸疾患治療法の開発
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15K18851
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
河野 裕允 立命館大学, 薬学部, 助教 (60732823)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マクロファージ / 磁場 / リポソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、標的部位へ目的物を選択的に送達し、滞留させる手法として「磁場」に着目し、外部磁場を利用した大腸選択的細胞送達法の構築と、それを利用したM2マクロファージによる炎症性腸疾患に対する細胞治療法の開発を目指すものである。平成27年度は、マクロファージに対して磁性体と治療用プラスミドDNAを同時に導入する手法の開発を行った。マグネタイトを内封したカチオン性リポソームとプラスミドDNAの複合体を作製し、磁場存在下においてマウスマクロファージ様細胞株RAW264細胞に添加後、磁場存在下において一定時間培養した結果、短時間で高いリポソーム取り込み、および遺伝子発現が得られた。また、本手法による細胞毒性、およびRAW264細胞の免疫応答に対する影響を評価した結果、顕著な細胞毒性は認められず、リポポリサッカライド存在下におけるサイトカイン産生能は未処理のRAW264と同程度であった。これらの結果より、カチオン性リポソームを利用してマグネタイトおよびプラスミドDNAを細胞内に導入する手法は、低毒性かつマクロファージの免疫活性に影響を及ぼさないことが確認できたので、マグネタイトを導入したRAW264細胞の腸管上皮細胞に対する接着効率を評価した。蛍光標識したマグネタイト導入RAW264細胞をCaco-2細胞単層膜上に播種し、磁場を付加した結果、RAW264細胞の接着率が顕著に増大することが明らかとなった。 以上、マグネタイト内封カチオン性リポソームを利用することで、マクロファージに対して短時間かつ高効率にマグネタイトおよびプラスミドDNAを導入することに成功した。また、本手法によりマグネタイトを導入したマクロファージは、外部磁場存在下において腸管上皮細胞に効率的に接着することを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、磁場に応答するM2型マクロファージの作製とその大腸送達効率を評価することを目標としていた。これまでに、マグネタイトの導入によりRAW264細胞に磁場応答性を付与できること、外部磁場との併用により本細胞を腸管上皮細胞に効率的に接着させることができることを明らかにしており、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、これまでに作製したマグネタイト導入RAW264細胞のin vivoにおける有用性の評価に取り組む。まず、in vivoマウス大腸に対するマグネタイト導入RAW264細胞の接着効率を検討する。蛍光標識したマグネタイト導入RAW264細胞をマウスに対して注腸投与した後、磁場を付加した際の大腸内蛍光強度を測定する。この際、RAW264細胞の大腸内接着効率が高くなるよう、磁場付加時間、および磁場強度の最適化を行う。また、同様の検討をマグネタイト導入RAW264細胞のマウスに対する経口投与でも行う。次に、M2型に分化させたマグネタイト導入RAW264細胞によるマウスIBD治療効果の評価を行う。デキストラン硫酸ナトリウムの経口投与により作製したIBDモデルマウスの大腸内にマグネタイト導入RAW264細胞を導入後、経日的に体重を測定すると共に、生存日数の計測を行う。また、一定期間経過後の大腸を摘出し、大腸内サイトカイン濃度の測定、および大腸の組織学的変化の観察を行うことで、IBD治療効果を総合的に判定する。
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Research Products
(15 results)