2015 Fiscal Year Research-status Report
機能性アクリルアミドゲルを用いるマイクロチップ糖鎖分析システムの開発
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15K18852
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
山本 佐知雄 近畿大学, 薬学部, 助教 (10707954)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | オンチップ法 / 糖タンパク質糖鎖 / 酵素消化 / 糖鎖調製 |
Outline of Annual Research Achievements |
機能性アクリルアミドゲルを用いるマイクロチップ糖鎖分析システムの研究では、用途の異なる2種類の短時間酵素消化法と、オンライン蛍光標識化法の開発を行い、医薬品研究や臨床現場で使用するためのマイクロチップ分析システムの開発を目的としており糖鎖解析に必要な、濃縮、特異的抽出および粗分画、蛍光検出などの一連の過程をチップ上で30分以内に完了することが可能な糖タンパク質糖鎖の高速分析法の開発を目指している。 平成27年度はピッペットチップを用いる短時間酵素消化法(オンチップ法)の開発と、短時間酵素消化法のオンラインマイクロチップ酵素消化法への適応に関する研究を遂行した。 酵素を混合したアクリルアミドゲル溶液をピペットチップに作製し、これを反応場とするオンチップ法では、N結合型糖鎖切断酵素であるPNGase Fを含有したゲル溶液をピペットチップに導入し,卓上サイズのLED光源をピンポイントで照射することでPNGase F含有アクリルアミドゲルを再現性良く作製できる条件を確立した。試料にN結合型糖鎖を有するヒト血清由来IgGを用い、反応温度、pHなどを最適化したPNGase F固定化ゲルチップによるオンチップ法と従来法の比較を行ったところ、酵素量を1/40にしても従来法で少なくとも1日必要であった工程を16分に短縮することができた。これらの結果はBMAS2015など数件の学会で口頭発表した。現在、研究成果をまとめた論文を作成中である。 また最適化を行ったオンチップ法をマイクロチップでのオンライン酵素消化に適応させたが、糖鎖の回収率はピペットチップで実施したオンチップ法の半分以下であった。現在はタンパク質を試料として用いトリプシンを封入したゲルをマイクロチップの流路に作製し、酵素反応の最適化を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度ではピッペットチップを用いる短時間酵素消化法(オンチップ法)の開発と、短時間酵素消化法のオンラインマイクロチップ酵素消化法への適応に関する研究を遂行した。オンチップ法についてはPNGase F固定化ピペットチップを再現性良く作製することに成功しており、既存の方法に比べ、酵素量、反応時間等を大幅に削減することが可能となっている。現在、研究成果をまとめた論文を作成中である。オンラインマイクロチップ酵素消化法では、トリプシンを封入したゲルを流路の中央に作製し、Nα-benzoyl-L-arginineを標品としてオンライン酵素消化の最適化を行なっている。トリプシンのアクリルアミドゲル層を通過した溶液では通過前と比べて大幅な検出時間の遅延が起こっているためマイクロチップ流路内においてもアクリルアミドゲルによる酵素消化が達成できると考えられる。また、現状では酵素消化が完了した試料溶液を回収し、キャピラリー電気泳動装置で測定を行っているため再現性などに大きな問題点がある。そこでマイクロチップの出口に外径365 nmのキャピラリーを直接接続できるシステムの開発に着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
機能性アクリルアミドゲルを用いるマイクロチップ糖鎖分析システムの研究に関して平成28年度はオンライン試料濃縮・標識化マイクロチップ電気泳動法の開発と糖鎖分析用マイクロチップの開発、および臨床分析への応用を実施する予定である。既にオンライン濃縮・標識化に関してはアミノ酸の濃縮と5-(4,6-dichlorotriazinyl) aminofluoresceinによる標識化を同時に達成できる条件を見出している。現在、汎用性の向上を目指し、FITCによるオンライン標識法の検討を行っている。また、糖鎖分析用マイクロチップの開発に関しては試料抽出で必要となる陽イオン交換機能を有するアクリルアミドゲル層の作製に着手し、陽イオン性試料の高感度検出を達成している。本年度は、現在までに開発した、様々な機能を有するアクリルアミドゲルを一つの流路に作製し、糖タンパク質から糖鎖の抽出・濃縮・分離・検出といった一連の分析操作を1枚のチップの上で30分以内に完結することが可能な糖鎖分析用マイクロチップ電気泳動法の開発を目指す予定である。
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Causes of Carryover |
これまで論文校正を依頼していた会社をエダンズグループジャパンに変更したため当初の予算よりも安くなった。また、学会での現在のマイクロチップ電気泳動に関する技術の情報収集、および研究テーマがこれまでの知見では達成できない可能性を考慮して新たなゲルの基盤となる素材を探索する目的で高分子ゲル学会に参加したため、当初の予定よりも旅費の割合が高くなってしまったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は研究計画の最終年度であり、当初の予定通りに新たなマイクロチップの基盤としての素材の探索に物品費を用いる予定である。当初の計画ではマイクロチップの基盤の作製をフコク物産株式会社に依頼する予定であったが、同程度の品質で見積もりの値段が安価であった株式会社北九州セミコンダクターKAWにマイクロチップ鋳型の作製を依頼する予定である。その他の予算に関しては当初の予算通りに予算を使用していきたいと考えております。
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Research Products
(9 results)