2015 Fiscal Year Research-status Report
抗肥満薬開発を念頭においた分泌性因子neudesinの解析
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15K18863
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
太田 紘也 神戸薬科大学, 薬学部, 研究員 (40638988)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | neudesin / 交感神経系 / ノルアドレナリン |
Outline of Annual Research Achievements |
代表者は所属する研究室で同定した分泌性因子neudesinの遺伝子欠損マウス(以下KOマウス)を用いてneudesinの生理的意義の解明を目指している。特にneudesin KOマウスが高脂肪食負荷により誘導される肥満に耐性を示すことに着目して、エネルギー代謝におけるneudesinの役割の解明、さらに将来的にneudesinを抗肥満薬創出の標的として利用する上で基盤となる知見の獲得を目指している。 代表者は研究期間内に、1:交感神経の活性化がneudesin KOマウスの抗肥満の表現型を引き起こすか開明する、2: neudesinが交感神経系活性を制御するメカニズムを解明する、そして3: neudesinによって制御されるシグナル経路を解明する、以上3つの課題に取り組む予定である。 代表者は本年度中に、上記の課題に関して次の成果を得た。まず薬物投与により交感神経系を破壊した場合にneudesin KOマウスの抗肥満の表現型が一部消失することを確認した。従ってneudesin KOマウスの抗肥満の表現型に交感神経系の活性化が寄与すると考えられる。次に交感神経の節後ニューロンのモデルとして利用されるPC12細胞に組換えneudesinたんぱくを添加したところ、neudesinがノルアドレナリン産生を抑制する可能性があることが判明した。最後にneudesinによる細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)の活性化がカンナビノイド受容体アンタゴニスト(SR141716)によって抑制されること、さらに予備的な検討結果ではあるがneudesinによる細胞増殖作用もSR141716の共添加によって抑制される可能性があることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画はおおむね順調に進展している。当該期間内に薬物(6-ヒドロキシドパミン)投与による交感神経破壊モデル作製の手技を習得し、このモデルを利用して、neudesin KOマウスの抗肥満の表現型の一部が交感神経系の活性化に起因することを見出した。 またneudesinによる交感神経活性制御の解明にも着手して、neudesinが交感神経節後ニューロンに作用してノルアドレナリン産生を抑制する可能性があることや、薬理的にカンナビノイド受容体を阻害することでneudesinによるERK活性化が抑制されることなども見出した。 neudesinの神経系以外への作用の解明や、neudesinがカンナビノイド受容体を介して作用する可能性を検討する上で、薬理学的手法以外の方法(たとえばカンナビノイド受容体のノックダウン実験)を用いた解析を今後行う必要があるものの、研究計画全体としては大きな問題なく進んでいると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの計画をさらに発展させる方向で研究を推進する。具体的には以下の2つの研究を予定している。 ①: 予備的な検討結果から、neudesinが脂肪細胞への交感神経刺激の入力を抑制し得ることが判明した。交感神経系は脂肪組織における熱産生・脂肪酸酸化制御において非常に重要な役割を果たす。今後上記の結果の再現性を確認する。また近年では交感神経刺激に伴って、白色脂肪組織に熱産生能を有する褐色脂肪様細胞が出現して、エネルギー消費の亢進に寄与することが分かっている。こうしたいわゆる「白色脂肪の褐色化」におけるneudesinの役割の解明にも着手する。 ②: カンナビノイド受容体アゴニスト(SR141716)を用いた解析によりneudesinがカンナビノイド受容体を介して作用しうることが分かっている。これまでに行った薬理学的な解析に加えて、今後siRNAないしCRISPR/Casシステムを利用してカンナビノイド受容体を欠損させた細胞株を樹立する。この細胞にneudesinを作用させた場合もSR141716添加時と同様にneudesinによるERK活性化がが消失するか確認する。 以上の方針でneudesinによるエネルギー代謝調節機序の解明をさらに進める予定である。
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Causes of Carryover |
実験自体は大きな問題なく進んでいたが、既に手元にある試薬類で賄える実験が多かったため、当初の予定よりも当該助成金を使用する機会が少なかったことが大きな理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
既に昨年度の終盤から当該助成金の使用が著しく増加していた。本年度もその傾向は変わらず、一方で消耗品類の購入や、抗体類やERISAキット、各種代謝パラメータ測定用キットなど比較的高価なものを購入する機会が増える。また、当該助成金を得た研究テーマに関して論文投稿の準備も進めている。従って本年度は、論文投稿に伴う経費(投稿料、英文校正に伴う費用)も計上される予定であり、繰り越し分も含めて、当該助成金を使い切る予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Deletion of the neurotrophic factor neudesin Prevents Diet-induced Obesity by Increased Sympathetic Activity2015
Author(s)
Ohta H, Konishi M, Kobayashi Y, Kashio A, Mochiyama T, Matsumura S, Inoue K, Fushiki T, Nakao K, Kimura I, Itoh N
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 5
Pages: 10049
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] 分泌性因子neudesinの遺伝子欠損マウスは交感神経活性の亢進により食餌誘導性肥満に耐性示す2015
Author(s)
太田紘也, 小西守周, 橋本大嗣, 樫尾篤樹, 持山喬之, 松村成暢, 井上和生, 伏木亨, 中山喜明, 中尾一和, 木村郁夫, 伊藤信行
Organizer
第38回日本分子生物学会年会
Place of Presentation
神戸
Year and Date
2015-12-03 – 2015-12-04
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