2015 Fiscal Year Research-status Report
双極性障害モデルの脳血管構造破綻における新規レドックスシグナルの役割の解明
Project/Area Number |
15K18865
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
倉内 祐樹 熊本大学, その他の研究科, 助教 (70631638)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 双極性障害 / Na+, K+-ATPase / 血管内皮細胞 / レドックスシグナル / 8-nitro-cGMP / 脳血流 / 精神疾患 / グリア細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、新生仔ラットより調製した大脳皮質組織切片培養系により、ウアバインによるNa+, K+-ATPaseの薬理学的な阻害による血管構造傷害機序について解析した。その結果、小胞体からのCa2+放出が血管内皮細胞傷害に関与しており、Na+, Ca2+交換系を介した細胞外からのCa2+流入は血管内皮細胞傷害には関与しない事が示唆された。さらにN-アセチルシステインが血管内皮細胞を保護した事から、Na+, K+-ATPase阻害により誘導される小胞体からのCa2+放出が活性酸素種の産生を増大し、血管内皮細胞を傷害する事が示唆された。 さらに、Na+, K+-ATPase阻害時に動員される細胞内シグナル伝達系についても解析した。ウワバイン処置によりAktのリン酸化が認められた事から、血管構造傷害におけるPI3-kinase/Aktシグナルの関与について検討したところ、PI3-kinase阻害薬であるLY294002の単独処置により血管内皮細胞のみならず、ペリサイトの傷害も認められた。この事から、Na+, K+-ATPase阻害時に活性化するPI3-kinase/Aktシグナルは内因性の細胞保護シグナルとして働くと考えられた。興味深い事に、脳血管を構成するペリサイトはNa+, K+-ATPase阻害によっても傷害を受けなかった事から、血管内皮細胞とペリサイトの細胞種特異的な生存機構の存在が示唆された。 活性酸素の関与について、8-nitro-cyclicGMPの産生やタンパク質S-グアニル化について解析したところ、ウアバイン処置によりS-グアニル化が亢進するタンパク質が存在する一方で、反対にS-グアニル化が抑制されるタンパク質も存在した。さらに免疫組織化学の結果、8-nitro-cyclicGMPは主にミクログリアで産生されており、今後はグリア細胞の活性化に着目した解析も行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はNa+, K+-ATPaseの薬理学的な阻害による血管内皮細胞傷害機序の詳細について解析を行い、小胞体からのCa2+放出や活性酸素種の産生が細胞傷害性に関与する事を見出した。さらに細胞内シグナル伝達系に着目した解析から、PI3-kinase/Aktシグナルの活性化が血管内皮細胞およびペリサイトの生存に関わる内因性の保護シグナルである事も明らかにした。加えて、8-nitro-cyclicGMPの産生およびタンパク質S-グアニル化レベルについても解析し、Na+, K+-ATPase阻害によるミクログリアの活性化状態の変化が血管内皮細胞傷害に重要な役割を担う事が示唆された。これらの結果の一部については、現在論文投稿中 (Brain Research, submitted) である。
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Strategy for Future Research Activity |
Na+, K+-ATPase阻害により主にミクログリアにおいて8-nitro-cyclicGMPの産生が認められ、同時にミクログリアの活性化型への形態変化も観察された。今後は、細胞間相互作用という観点から、グリア細胞 (ミクログリアやアストロサイト) や神経細胞の関与にも着目し、諸種阻害薬を用いた解析を行う。具体的には、ミクログリアやアストロサイトの活性化を抑制する薬物や、神経細胞の活性化を抑制する薬物が、ウアバインによる細胞傷害性に与える影響について検討する。また、S-グアニル化レベルが変化するタンパク質の網羅的解析と血管内皮細胞傷害との関連についても解析し、どのような機能を持つタンパク質のS-グアニル化レベルの変化が血管内皮細胞傷害に関与するか調べる。特にKeap1などの酸化ストレスシグナルに関与するタンパク質に着目する。また、治療薬・予防薬の観点から、血管内皮細胞傷害を保護する薬物の探索も同時に行う。
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[Journal Article] Effects of cyclodextrins on GM1-gangliosides in fibroblasts from GM1-gangliosidosis patients.2015
Author(s)
Maeda Y, Motoyama K, Higashi T, Horikoshi Y, Takeo T, Nakagata N, Kurauchi Y, Katsuki H, Ishitsuka Y, Kondo Y, Irie T, Furuya H, Era T, Arima H.
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Journal Title
J Pharm Pharmacol.
Volume: 67
Pages: 1133-1142
DOI
Peer Reviewed
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