2015 Fiscal Year Research-status Report
神経細胞死を惹起するPARの細胞内局在を制御する機構の解明
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15K18871
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
間下 雅士 同志社女子大学, 薬学部, 助教 (30738886)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | parthanatos / DNA damage / cell death / PARP1 / caspase / apoptosis |
Outline of Annual Research Achievements |
Poly-ADP-ribose (PAR) が関わる細胞死 parthanatos は、核で産生された PAR が細胞質に移行することから始まる。本研究は、PAR が核から細胞質へ移行する機序に着目し、PAR の核外への移行を制御する因子の特定およびその制御因子と神経細胞死との関連性の解明という課題に挑戦している。27 年度は、PAR の核外への移行を促進する因子の特定を行い、以下の実験から PAR 産生酵素である PARP1 自身が、PAR の細胞質への移行のキャリアになっていることを見出した。 1. Hela 細胞にアポトーシスを誘発する staurosporine を添加したところ、細胞死が誘導された。この細胞死は、caspase 阻害剤で完全に抑制され、PARP 阻害剤で部分的に抑制された。PAR は staurosporine 刺激 2 時間後に核で産生され、4 時間後に細胞質へ移行した。 2.Staurosporine により活性化した PARP1 は、PAR を自身に付加するとともにcaspase によって 89-kDa と 24-kDa のフラグメントに断片化された。 3. 89-kDa PARP1 フラグメントは、PAR の付加を維持しつつ細胞質に移行し、parthanatos の誘導に必要な AIF や hexokinase と PAR を介して結合していた。これらの現象は、shRNA および阻害剤によって PARP1 の活性を抑制させることで消失した。 以上の結果から、PAR の核外への移行を促進する因子を特定することができた。加えて、parthanatos は、アポトーシスとは異なりcaspase 非依存的な細胞死であると考えられていたが、今年度の研究から、caspase 依存的な細胞死の経路においても parthanatos は起こりうることを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究概要の部分でも述べたように、本研究の目的である PAR の細胞質への移行を引き起こす因子として PARP1 を同定することができた。加えて、caspase 依存的な細胞死の経路においても parthanatos は起こりうることを初めて証明した。 PAR の細胞質への移行は、免疫染色法および細胞分画後のウェスタンブロッティングにより検出することができたが、細胞質移行する PAR の定量法の確立は、達成できなかった。これについては、引き続き検討を行う予定である。 研究成果については、1報の欧文論文 (印刷中)として公表することができた。また、BMB2015のシンポジウムにおいて招待講演を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
Parthanatos は、脳虚血時やパーキンソン病などの神経変性疾患の神経細胞死の原因になることが報告されている。今年度の結果に基づき更なる展開として、マウスの大脳初代培養細胞や脳において parthanatos 誘導時の PARP1 の細胞内局在を調べる。加えて、PARP1 の局在変化を抑制させることで、parthanatos による神経細胞死への影響を検討する。
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Causes of Carryover |
研究成果を海外の学会および論文で発表する計画であったが、そこまでの水準に達していなかったため、旅費、人件費及びその他に計上していた費用を使用しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度中に論文を複数報投稿予定であり、また、学会においても発表を予定している。そのための英文校正費、投稿費および旅費として次年度に使用する予定である。
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