2015 Fiscal Year Research-status Report
プロスタノイド受容体CRTH2を介する高次脳機能調節のメカニズムの解明
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15K18874
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
尾中 勇祐 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 特任助教 (90749003)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | プロスタグランジンD2 / CRTH2 / モノアシルグリセロールリパーゼ / 扁桃体 / 前頭前皮質 / 情動機能障害 / 認知機能障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
プロスタグランジンD2受容体CRTH2は、末梢炎症での機能解明が進んでいる分子である。我々は、CRTH2が情動・認知機能障害の発現に関与することを見出し、世界で初めて高次脳機能におけるCRTH2の役割を明らかにした。その後、我々は、がん病態モデルなど、複数の病態モデルで認められる情動・認知機能障害にCRTH2が関わることを明らかにしてきたものの、CRTH2による神経機能の調節メカニズムは、未だ不明である。本年度は、情動・認知機能障害を示す動物モデルにおいて、CRTH2シグナルの活性化に関与する脳領域とタイムウィンドウの特定を目的とした。 CRTH2 mRNAの脳内発現分布を調べた結果、情動・認知機能調節において重要とされる脳領域である、海馬等を含む脳内の広い範囲に発現が認められた。次に、がん病態モデルマウスの各脳領域における、CRTH2のリガンド、PGD2の合成に関連する酵素の発現量を解析した。その結果、がん病態モデルマウスの扁桃体および前頭前皮質において、2-アラキドノイル酸をアラキドン酸に変換する酵素であるモノアシルグリセロールリパーゼ(MAGL)の発現上昇を確認した。 また、新たな知見として、リポ多糖の急性投与により誘発される情動・認知機能障害は、CRTH2の拮抗薬の前投与では改善するものの、後投与では改善しないことを明らかにした。 今後は、MAGLと情動・認知機能障害との関連を明らかにするとともに、CRTH2シグナルにより機能調節される神経細胞種等を明らかにすることで、CRTH2による神経機能調節のメカニズムを明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、情動・認知機能障害を示す病態モデルの脳内において、CRTH2シグナルが活性化する脳領域の特定を達成できた。CRTH2の脳内発現分布の解明については、免疫染色法、ウエスタンブロッティング法、in situ hybridization 法により解析したが、CRTH2の特異的なシグナルは得られていない。一方で、新たな知見として、リポ多糖急性投与モデルにおけるCRTH2の時間依存的関与を明らかにすることができた。このことから全体としては順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、がん病態モデルの情動機能調節におけるCRTH2シグナルの関与について、より詳細に明らかにしていく予定である。具体的には、がん病態モデルを用いて、MAGLの阻害剤を用いた行動薬理学的解析やMAGLの免疫染色を予定している。また、CRTH2シグナルにより機能調節される神経細胞種等を明らかにする目的で、CRTH2遺伝子欠損マウスにおけるノルアドレナリン受容体等の発現量の解析を予定している。
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Research Products
(1 results)