2016 Fiscal Year Research-status Report
うつ病発症における脳アストログリア空間的カリウム緩衝機構の生理的役割の解明
Project/Area Number |
15K18878
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
中谷 善彦 国際医療福祉大学, 薬学部, 助教 (40582169)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | グルココルチコイド / カリウムチャネル / Kir / グリオーマ |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の研究に引き続き、ラットグリオーマ腫由来細胞株であるC6グリオーマ細胞において、細胞間隙のカリウムイオン濃度調節に関わると考えられるKir4.1, 4.2, 5.1チャネルの他、Kir2.1およびNa+/K+ ATPase のタンパク質発現量を検討した。その結果、Na+/K+ ATPaseの高い発現が認められたが、Kir2.1, 4.1, 4.2, 5.1の発現は認められたものの総じて低レベルであった。この結果を踏まえ、このC6グリオーマ細胞のdbcAMPによる分化誘導処置を試み、各Kirチャネルの発現量の変化を検討した。1mM dbcMAP添加1% FBS/DMEMで 0.5, 1, 3, 6, 24, 48時間と時間経過を追って培養したところ、分化誘導24時間以降からWestern blot法によりGFAPの強い発現が認められたことから、アストログリア様細胞に分化誘導されたことが確認できた。この結果を踏まえ、分化誘導条件での培養後における各種 Kirチャネルおよび Na+/K+ ATPase のタンパク質の発現変化をWesterun blot法で確認したところ、分化誘導24時間以降からKir4.1の強い発現上昇が認められた。このことから、C6グリオーマ細胞の分化誘導とKir4.1チャネルの発現上昇との相関関係が示唆された。更に、この分化誘導条件において、グルココルチコイドホルモンであるコルチコステロンを添加したところ、分化誘導によるKir4.1の発現上昇の抑制が認められた。以上の事から、グルココルチコイドホルモンがC6グリオーマの分化によって得られたアストログリア様細胞に発現する一部のKirチャネルの発現量に影響を及ぼすことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
C6グリオーマ細胞において、Na+/K+ ATPaseを除いた今回研究の対象としたKirチャネルの発現レベルが低かったことから、C6グリオーマ細胞をアストログリア様細胞に分化誘導することで研究を進めることとし、その培養条件の確立を目指した。最終的に1mM dbcAMPを添加した1% FBS/DMEMで培養することで、分化誘導が可能であることを明らかすることができたものの、当初の予定よりも時間を費やすこととなった。また、長期の継代培養によって分化誘導の効果が漸減的に低下することも明らかとなったため、細胞継代数を制限して実験を行う必要が生じ、その条件を明らかにする必要も生じた。以上の理由より、実験の進捗が遅れることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
C6グリオーマ細胞の分化誘導培養条件の確立やC6グリオーマ細胞の分化誘導やグルココルチコイドホルモンの共存下でKirチャネルの発現量に変化を見出したことから、今後はこの分化誘導させたC6グリオーマ細胞をモデルとし、Kirチャネルの機能変化を電気生理学実験などから解析し、カリウムイオンの緩衝能に及ぼす影響を検討を予定する。
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Causes of Carryover |
本年度は、C6グリオーマ細胞のアストロサイト様細胞への分化誘導条件の確立に伴い、実験の進捗に遅れが生じた。このため、使用額が予定より減少し、次年度使用額が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後、アストロサイト様細胞へ分化誘導させたC6グリオーマ細胞を使用し、ホールセルパッチクランプ法にてグルココルチコイドホルモンによるカリウムチャネルの発現変化に伴う機能変化の有無を解析する予定である。当初よりも実験の進捗が遅れていることから、ホールセルパッチクランプ法の成功率を上げて効率よく実験を進めるために、マイクロフォージを購入する予定である。また、グルココルチコイドホルモンにより発現変化が認められたカリウムチャネル遺伝子を購入し、カリウムチャネル過剰発現細胞株作製の効率化を図る予定である。
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