2015 Fiscal Year Research-status Report
抗トリパノソーマ活性物質actinoallolideの遺伝子操作による類縁体合成
Project/Area Number |
15K18888
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
稲橋 佑起 北里大学, 感染制御科学府, 助教 (70645522)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 放線菌 / 生合成 / トリパノソーマ / Actinoallomurus / Actinoallolide |
Outline of Annual Research Achievements |
放線菌Actinoallomurus fulvus K09-0307が生産する抗トリパノソーマ活性物質actinoallolideの生合成遺伝子を遺伝子操作により改変させ、肝ミクロソームでの代謝を受けにくく、抗トリパノソーマ原虫薬として発展可能なactinoallolide類縁体の合成を目的に研究を行った。 K09-0307株のドラフトゲノムシークエンスよりactinoallolide生合成遺伝子クラスターを推定し、actinoallolideはポリケチド合成酵素によってマロニルCoAやメチルマロニルCoAを基質として炭素骨格が合成され、 P450によりヘミケタール環が形成されることで合成されると予想した。生合成遺伝子を改変するため、始めにK09-0307株へのプラスミド導入を検討した。Actinoallolide生合成遺伝子クラスターのP450遺伝子を相同組み換えで欠損させるベクターを構築し、プロトプラスト法及び接合伝達法を用いてK09-0307株へのベクターの導入を試みたが、いずれの方法でもベクターが導入された株は得られなかった。K09-0307株へのベクター導入は困難であると判断したため、次にactinoallolide生合成遺伝子クラスターの異種発現を検討した。K09-0307株のゲノムのコスミドライブラリーを作成し、PCRを用いて当遺伝子クラスターを含むコスミドを探索した。その結果、当遺伝子クラスターの前半25kbを含むコスミド及び後半36kbを含むコスミドを取得し、それらをGibson Assemblyを用いて結合させることにより、当遺伝子クラスターの全領域を含むベクターの構築に成功した。 今後は構築したベクターを異種発現宿主に導入し、actinoallolideの異種発現を行う。さらに、ベクター上の生合成遺伝子を改変することにより類縁体の取得を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Actinoallolideの生合成遺伝子変異株を取得することを目的に研究を行った。しかし、 一般的に放線菌で用いられている方法(プロトプラスト法および接合伝達法)を用いて変異株作成用ベクターをActinoallomurus fulvus K09-0307に導入することを試みたが、成功には至らなかった。 K09-0307株への変異株作成用ベクターの導入は困難であると判断したため、 actinoallolide生合成遺伝子クラスターを発現用ベクターにクローニングし、異種発現用宿主で発現させることにした。 K09-0307株のゲノムのコスミドライブラリーを作成し、PCRを用いて当クラスターを含むコスミドを探索した結果、当クラスターの前半25kbを含むコスミド及び後半36kbを含むコスミドを取得した。当遺伝子クラスターの全長は約50kbあり、全領域をコスミドにクローニングすることは不可能であったため、取得したクラスターの断片を 結合させ、BACベクターに載せ替えることにした。複数のラージサイズDNAを結合させるには、より特異的で効率的な手法が必要であり、Gibson Assembly(Gibson et al. Nature Methods, 6, 343-347, 2009)を用いることで 当遺伝子クラスターの全領域を含むベクターの構築に成功した。構築したベクター上の遺伝子を改変させることで、当初目的としていた変異株作成よりも簡便に生合成遺伝子の改変が行えることが期待させる。
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Strategy for Future Research Activity |
1) Actinoallolide生合成遺伝子クラスターの異種発現:当クラスターを含むベクターを異種発現宿主(Streptomyces albus J1074, S. coelicolor M1152, S. lividans TK24等)に導入し、actinoallolideの異種発現を行う。 2) 生合成遺伝子改変: 構築したベクター上のポリケチド合成酵素のドメインを改変することより、エステル結合近傍の炭素鎖を伸長させ、actinoallolide のエステル結合の加水分解を防ぐ。また、dehydrataseドメインの改変により、エステル結合近傍に水酸基を位置選択的に導入し、有機化学反応による誘導体合成の足がかりを構築する。 3) Actinoallolide類縁体の単離精製:改変したベクターを異種発現用宿主に導入し、actinoallolide類縁体を生産させる。得られた培養をDiaion HP-20, シリカゲル, ODSなどの樹脂を用いて単離精製を行い、NMR解析や質量分析をし、その構造を解析する。 4) 肝ミクロソームでの安定性評価:得られた類縁体をマウス肝臓S9 mix溶液中でインキュベートし、反応物をLC/MSを用いて解析し、化合物の残存率を測定する。 5)抗トリパノソーマ活性評価:Trypanosoma brucei brucei GUTat3.1を用いて得られた類縁体の 抗トリパノソーマ活性を評価する。
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