2015 Fiscal Year Research-status Report
キノン体による化学修飾を介した芳香族炭化水素受容体の活性化:新機構の提案
Project/Area Number |
15K18906
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
安孫子 ユミ 筑波大学, 医学医療系, 助教 (80742866)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | シグナル伝達 / 環境毒性学 / 親電子物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、大気中に含まれる芳香族炭化水素類の代謝産物である親電子性を有するキノン体による芳香族炭化水素受容体(AhR)の活性化機序を明らかにすることを目的としている。平成27年度は、1,2-ナフトキノン、1,4-ナフトキノンおよび1,4-ベンゾキノン等がAhRの下流遺伝子であるCyp1a1を誘導することを明らかとした。 Cyp1a1の誘導がAhRに依存するか否か、AhRアンタゴニストおよびAhRに変異を有するC35細胞を用いて検討したところ、キノン体曝露に起因するCyp1a1の誘導が抑制されたことから、本Cyp1a1の誘導はAhR依存的であることが示唆された。AhRは、活性化に伴い核へ移行してARNTとヘテロ2量体を形成し、DNA上のXRE領域へ結合することが知られているため、キノン体を用いてこの一連の事象を検討した。キノン体の曝露により、AhR核移行およびAhR-ARNT相互作用の亢進が認められ、ルシフェラーゼ活性測定によりCyp1a1プロモーター領域の活性化も検出された。また、キノン体の母化合物であり親電性を有さないナフタレンやベンゼンの曝露では、Cyp1a1の誘導が認められなかったことから、キノン体曝露で見られたAhRの活性化およびCyp1a1の誘導はこれらの物質の化学的性質に起因することが示唆された。 親電子物質はタンパク質のシステイン残基と共有結合することて被修飾タンパク質の機能変化を引き起こすことが知られているため、AhRのリガンド結合部位にあるシステイン残基のセリン変異体(C327S)を細胞内に高発現し、1,2-ナフトキノンによるCyp1a1の誘導を検討したところ。野生型AhRを高発現したものに比してCyp1a1の誘導は抑制されたことから、キノン体によるAhR活性化およびCyp1a1の誘導は、キノン体のAhRへの親電子修飾が関与しているのかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、親電子性を有するキノン体がAhRを活性化することを明らかにすることを計画しており、それを実行した。当該年度の研究成果は、日本毒性学会の発行する英文学術誌であるJournal of Toxicological Sciencesに投稿して掲載された。このことから、本研究課題の進捗状況はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、一連の親電子性を有するキノン体によるAhR活性化に対する親電子物質の捕獲に寄与している反応性含硫化合物の効果について研究を行う。 近年、親電子物質が生体内でシスタチオニン γ-リアーゼから産生される反応性含硫化合物と反応して、イオウ付加体を形成することが明らかにされた(Ida T et al, PNAS, 2014)。このことは、本酵素が親電子物質の反応性制御に重要な役割を担っていることを示唆している。そこで、シスタチオニン γ-リアーゼノックアウトマウスおよび野生型マウスから得た初代肝細胞を用いて、本酵素の有無で親電子物質によるAhRの活性化が変動するか否か検討する。また、初代肝細胞を反応性含硫化合物で前処理を行い、当該キノン体によるAhR活性化の変動を調べる。得られた研究結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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Research Products
(5 results)